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商いの風景を折り重ね 地域と銀行をつなぐ

銀行が身近に感じられるような店構えを目指し、「地域に開かれた銀行」というコンセプトを実現するために意匠・構造・設備が一体となってさまざまな工夫を積み重ねたプロジェクトです。

環境に配慮した設計が当初より与件に掲げられていたことから、断熱性向上・日射遮蔽性能・自然光の活用といったパッシブな手法に加え、太陽光発電や高効率な設備機器の導入などのアクティブな手法を組み合わせています。この建物では、周辺環境への配慮において「開く・ずらす・閉じる」という3ステップにより、つづら折りのような外装を持つ建築を構成しました。

「地域に開かれた銀行」をコンセプトとした北國銀行富山支店

開放性と環境性能を両立する「つづら折り」の建築計画

建築の法令上、敷地の境界線から一定の範囲(延焼の恐れのある範囲)にガラス等の開口部を設ける場合、これを防火設備(網入りガラス等)とする必要があります。その際、開口のサイズや断熱性能上の制約が発生します。

そこで、延焼の恐れのある範囲からずらすようにフルハイトの開口を設けることで開かれた外装を実現しました。延焼の恐れのある範囲内には防火袖壁や外壁を設けることで、防火性能を確保しています。各階の平面的なずれから生まれる庇によって南面の日射負荷を抑制し、南北面からも自然光を取り入れることを可能としています。

「つづら折り」の立面ダイヤグラム 「つづら折り」の立面ダイヤグラム
「つづら折り」の立面ダイヤグラム

屋根面は太陽光発電の効率向上を目指した傾斜屋根にするとともに、冬季の積雪時の雪解け水を円滑に排出できる計画としました。また、屋根勾配によって生まれた高階高空間に天井高さの必要な発電機室を配置するなど、建築の構成を活かした設備計画としました。

このようなパッシブな手法とアクティブな手法を組み合わせた取り組みによって「Nearly ZEB」を達成しました。

エネルギー消費性能
BELS評価ラベル(BEI=0.2)

「街の光」を実現する照明計画

本計画では、街に対して開かれた施設とするため、「街の明かり」としての照明にも注力しています。サッシとブラインドの間にライン照明を仕込み、営業時間外でも穏やかな光がにじみ出る計画とすることで、夜間においても街並みに調和する存在となるよう配慮しました。特に1階では軒下空間の照度確保とあわせて、ブラインド面を照らすことで行燈のような柔らかな光を生み出し、歩行者が安心して通行できる夜間景観の形成を目指しました。加えて、2階・3階のコーナー部にも照明を配置し、建物が街の複数方向に対して開かれている構成を夜景として表現しました。

夜景外観:「街の明かり」としての役割も担う照明計画

屋内では階段の明るさを手すりに組み込んだ照明で確保する計画としました。線状の光を水平に連続させることで、空間に軽やかなリズムを与えるとともに、視線の誘導にも寄与させることを意図しました。

一方で、照明器具を露出させない納まりの実現にあたっては、多くの技術的課題がありました。設計段階から配線ルートを極力目立たせない計画を検討し、現場監理段階において配線長の制約を踏まえながら、電源ユニットの設置位置について施工者と何度も打ち合わせを行い、意匠を損なわない納まりを実現しました。また、手すり自体が特注製作であったため、照明器具を取り付けるための開口を事前に調整していたものの、現地では寸法の微調整が必要となり、施工者と協働して収まりの最適化を図りました。

デザインに溶け込むよう工夫した階段手すり照明

「見せない設備」がつくるつづら折りの外装

建物の外壁面には、換気のための外気の取り入れ・排気を行うため、給排気口やガラリを設けるのが一般的です。一方、この建物では内外のつながりを感じられる設えを実現するべく、外部の軒先と内部の天井をフラットに連続させて内外の境界をガラス面で統一し、換気機能を建築外装に溶け込ませることを目指しました。

各階の断面的なずれにより生まれた軒裏の空間をチャンバーボックスに見立て、外気の給気口は軒とガラスサッシの取り合い部に潜ませることによって外装に溶け込ませています。また、軒裏全体をチャンバー利用としていることで、任意の箇所にダクト接続が可能であり、雨風や北陸特有の降雪の吹き込みも防ぐことができ、内部の設備おさまり上も合理的な計画を実現することができました。

合わせて、給気は南北面の軒先から取り込み、排気を東面に集約しショートサーキットにも配慮した換気計画としました。この際に、給湯室やトイレなど、臭気の発生する諸室を東側に配置し、執務空間への給気の一部を、これらの諸室を経由して排気する計画とすることで、換気に要するエネルギーを削減する合理的な換気計画としています。

左図:給気スリットがデザインに溶け込む軒裏チャンバーボックス
右図:ショートサーキットに配慮した給排気ダイヤグラム

遠方地プロジェクトの工事監理業務

設計段階で意図した「建築・設備・照明の一体化」を実現するためには、施工段階においても設計者と施工者の密な連携が不可欠でした。

本プロジェクトは富山県富山市に位置し、私たちが普段勤務している東京の本店からは新幹線で約2時間半の距離にあります。富山駅から徒歩圏内にあるものの、日常的に現地へ赴くことが難しいことが課題でした。こうした場合はメールやオンラインでのやり取りが中心となるため、問題が生じた際は解決までに時間を要したり、画面越しのやり取りでは細部の納まりに関する理解に齟齬が生じやすくなります。

設備工事は天井裏や壁内など完成後には見えなくなる部分が多く、オンラインで共有できる情報には限りがあったため、月1回の総合定例で現地に赴いた際には、施工者と直接対話しながら、オンラインでは共有しきれなかった課題を整理し、相互の認識をすり合わせることを重視しました。建築・設備・照明の一体化を図るうえでは、各工種の納まりや施工手順の調整が重要であり、図面や写真だけでは伝わりにくい内容も少なくありませんでした。そのため、現地で関係者と対面で設計意図を共有し、計画との整合及び施工方法を確認しながら調整を進めることで、各工種が連携し一体化された空間づくりにつなげました。

また、工事が後半に進むと設備関連の検査が増え、現場への訪問頻度も高まりました。竣工間際には各種検査が集中し、多い週には3〜4回現地に行きました。限られた時間の中で効率的に確認を進めるため、事前に確認項目を整理し、現地では施工者とその場で判断・是正対応ができる体制を意識しました。遠隔対応と現地対応、それぞれの特性を理解し適切に組み合わせることで、品質確保と円滑な工事推進を両立させることの重要性を実感しました。

  1. 基準一次エネルギー消費量に対し、省エネによって50%以上削減し、さらに創エネを含めて75%以上削減した建物。
  2. 給気口と排気口の位置が近いために、排気が給気口に流入してしまう現象

Designer's Voice

設計者

電気設備設計部 / 2022年入社

青柳 徹

Tetsu Aoyagi

入社後、初めて設計から竣工まで一貫して携わった物件です。地域の街並みや周辺環境との調和を意識しながら計画を進めました。竣工後には建物が地域の景観に自然に溶け込む姿を見ることができ、大きな達成感を得るとともに、設計から完成に至るまでの幅広い知見を深める貴重な経験となりました。私にとって、忘れることのできない思い出の一つとなっています。
※所属はプロジェクト担当時点

設計者

機械設備設計部 / 2021年入社

高椋 敦士

Atsushi Takamuku

主担当として設計から竣工まで一貫して携わり、建物が建設されていく過程を一通り経験できた思い入れのあるプロジェクトであり、大変嬉しく思います。社内に限らず、事業者・施工者・メーカーの皆様の多くの方のご助力もあり、竣工を迎えるとともにNearly ZEBの達成もできました。この場を借りて心より感謝申し上げます。
※所属はプロジェクト担当時点

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