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2007.04.01

連載|ものづくりの視点 No.11

国際都市東京における景観

岩井 光男

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このような状況下で東京都は、美しく風格のある首都東京を実現しようと、景観法に定める考え方に(1)都民、事業者等との連携による首都にふさわしい景観の形成(2)交流の活発化・新たな産業の創出による東京のさらなる発展(3)歴史・文化の継承と新たな魅力の創出による東京の価値の向上、の3つの基本理念を加え、景観形成を進めていくとしている。そして建物の配置や形態、色彩など景観形成基準を設けて、これまでにない具体的な内容に踏み込んだ「東京都景観計画」が4月1日に施行された。

 

この基本理念については大いに賛成である。しかし景観形成基準の運用、特に建築物の外壁色を規制する色彩基準については、慎重に運用してもらいたい。色彩基準を表すのに用いられるマンセル値は、アメリカの美術家アルバート・マンセル(1858~1918)が考案した色彩表現体系「マンセル表色系」において色相、明度、彩度を組み合わせて数値記号化したものである。ちなみに丸の内で復元する三菱一号館の外壁煉瓦をマンセル値で表すと10R5 / 6、前川國男設計の東京海上ビルの外壁は10R4 / 6となる。これら外壁色を今回の大規模建築物における外壁基本色の色彩基準(明度4以上は彩度1以下)に照合すると、実は彩度の部分が大幅に適合しない。「一丁倫敦」と称され、西欧化の象徴として親しまれた丸の内の街づくりは、明治27年に竣工したこの三菱一号館から始まり、大正3年には辰野金吾設計で赤煉瓦の東京駅駅舎が出来上がった。丸の内の街の歴史的な色とも言える赤煉瓦の色が不適合となる景観色彩基準には大いに疑問を感じる次第である。

 

歴史の厚みを感じる街の色は、地域の人々が永年積み上げてきた文化の表れである。そもそも人の色彩感覚は主観による部分が大きい。感覚文化的なものは数値記号化して規制することに馴染まないし、白黒はっきりさせる問題ではない。実際、先のイタリア文化会館の問題についても賛否両論さまざまな意見がある。

 

木と土壁と屋根瓦の街並みに赤煉瓦の西洋建築が現れた当時、東洋と西洋を往来した英国の詩人ジョセフ・ラドヤード・キップリングは「東は東、西は西、両者が出会うことはない」という詩を残した。 それから120年近くが経ち、グローバル化が進む現代社会では、異文化との衝突は避けられない。むしろ異文化と混じりながら新しい文化の創造を目指すべきであろう。新しい文化をどこまで受け入れ、従来の文化の何を守るのか、そしてどのような景観をつくっていくのか。これが私たちに与えられた課題である。

Profile

元株式会社三菱地所設計 代表取締役副社長執行役員

岩井 光男

いわい みつお

Update : 2007.04.01

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