2019.05.30

R&D WORKS Vol.05

次世代アンビエント照明

照明器具の設計に求められる感覚的性能
「明るさ感」を進化させる。

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光環境を評価するときに「明るさ感」という尺度があるのをご存じでしょうか。照度や輝度の高さと、明るく感じるかどうかは実は別もの。周りが暗いとより明るく感じるように、人の眼は環境に順応するからです。この「明るさ感」に基づいて照明器具を設計すると、実際の照度や消費電力が低くても、同じ明るさに感じられるようにデザインでき、省エネルギーになります。オフィス空間の光環境を最適化するために、「明るさ感」を向上させる器具を三菱電機照明とともに研究開発しました。

次世代アンビエント照明の配光図

「明るさ感」という指標

照明を計画する際、部屋の明るさを決めるときには何を基準にするでしょう?一般的に机の上の照度などを測って指標とします。しかしそれで十分でしょうか?最終的には人がどう感じるかによって明るさを設定するという考え方があります。そのとき指標になるのが「空間の明るさ感」。その部屋の各部分から反射された光の強さ、つまり輝度をベースにしながら、コントラストなどを加味して人が明るく感じるかどうかを補正した値です。モノから感じる明るさを「非常に暗い」~「非常に明るい」まで13段階に分けて分布図をつくり、適切に明るいと感じる領域を増やすことで「明るさ感」が高まり、省エネルギー化と明るさ感向上を両立した照明計画が可能となります。今回、この「明るさ感」に着目しました。

  • 「明るさ感」はNB値で示す。NB値は中村芳樹教授(東京工業大学)が提唱する指標。1が「非常に暗い」、7が「明るくも暗くもない」、13が「非常に明るい」を示す。
あるオフィスのNB値画像。
「明るく見え、明るさ感を向上させる」
NB値7~8.5の黄色部分が多いほど明るさ感がある。

「明るさ感」を向上させるデザインとは?

環境の「明るさ感」を向上させると、机上の照度をたとえば500lxから350lxに落としてもその空間は暗く感じることはなく、オフィスワーキングの光環境としては十分。その分消費電力を抑えられ、省エネルギーにつながります。そこでオフィス向けグリッド天井照明の「明るさ感」を向上させるデザインを追求しました。

「どのような配光曲線を描くと、適正な明るさ感となるのか?」が課題でした。従来、机上や壁への配光は重視されてきましたが、視界をある程度占める天井面に光を向けることも必要であることがわかってきました。得られた結果は、配光における光束が下方に8割、上方に2割という比率。この配光に従ってデザインしたのが「次世代アンビエント照明」です。

上:従来照明。机上は明るいが、天井面と上方壁面で明るさ感が減少。
下:次世代アンビエント照明。省エネをはかりつつ室内全体で明るさ感が得られている。

プリズム効果をもたらすカバー形状

「次世代アンビエント照明」は透明ポリカーボネート製のカバー断面形状が重要なポイント。断面が三角形状のカバーは光をプリズムのように天井面と下方に振り分ける役割を果たします。従来の照明500lx(LED光源、4000K)と次世代アンビエント照明350lx(LED光源、4000K)を比較する実証実験を行いました。従来照明をアンビエント照明に替えることで、NB値の7~8.5領域率が7.7%から8.9%に増加。一方消費電力は6.1W/m2から4.4/m2に減少しました。


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