2026.03.31

設備設計者が語る。環境・設備のアイデアノート Vol.26

都市インフラを「つくり、受け継ぐ」 みなとみらいの40年

みなとみらい21地区の地域冷暖房(DHC)システム

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みなとみらい21中央地区の地域冷暖房施設の歴史

みなとみらい21地区は1989年の横浜博覧会に合わせ1983年に起工し、40年以上をかけて発展してきた総面積186haのエリアです。

みなとみらい21地区の中央地区には共同溝が張り巡らされており、共同溝内の冷水・蒸気配管で地区内の空調や給湯を行う熱供給方式が採用されています。この熱供給は、横浜博覧会の際に設立された「みなとみらい21熱供給株式会社」が行っており、横浜博覧会の各パビリオンへの熱供給を皮切りに、現在はみなとみらい中央地区全域(141ha)への熱供給を行っています。単一の供給区域では日本最大、プラント内に設置されているボイラー(温熱源の蒸気を製造する機械)も日本最大、冷凍機(冷熱源となる冷水をつくる機械)は世界最大級の製造能力を有しています。

現在、私たち都市エネルギー計画部では、横浜博覧会の際に竣工した「センタープラント」と、1997年に竣工した「クイーンズスクエア」の地下にある「第2プラント」のリニューアル計画、今工事中の「みなとみらい21中央地区52街区」内に計画されている「第3プラント新築工事」、地域配管網の効率化等、地域を支えるインフラ設備の検討・計画・設計・工事監理を行っています。


既存プラントの大規模リニューアルとCOP向上への取り組み

画像出典:みなとみらい21熱供給株式会社パンフレット(赤枠・赤字部分は三菱地所設計加筆)

1989年に稼働した「センタープラント」は2014年から11年間をかけて、ボイラー・冷却塔の新設と8台の冷凍機を更新するリニューアル工事を実施しました。また、1997年に稼働した「第2プラント」は、竣工後に7回の増設工事を経た後に、2020年からの4年間で、8台の冷凍機と5台の冷却塔を更新・新設する大規模リニューアルを実施しています。

こうしたリニューアル工事は、地区内の開発に伴い増加する熱需要への対応を行うとともに、プラントの効率(COP=Coeffcient of Performance/総合エネルギー効率)の向上と、さらなる安定供給の実現を目的としています。古くなった機械を撤去して、新しい機械を導入するだけでも効果を発揮します。それに加えて、搬送動力の削減や合理化、付随する補助機器類の計画もCOPに影響するため、細かな検討や、配管供給網における効率検討を行うことで、大幅なプラントCOP向上に貢献しています。

MM21DHCの2004年以降のCOP推移(2023年度より係数変更)
MM21DHCの2004年以降のCOP推移(2023年度より係数変更)

皆でつなぐ既存プラントの更新改修

さて、私個人は2021年にDHCの仕事に携わり始めました。

それまで15年以上、建物の設備設計に携わってきましたが、DHCの仕事は聞いたことのない単語や、行ったことのない検討続きでした。その上、すでに稼働しているインフラ設備に関わる工事を進めるため、熱供給を行いながら大型機械の更新をするためにはどうすればよいか? といった非常にシビアなスケジュール検討なども求められます。

右も左もわからない中で、当社のベテラン社員の力を借りながら、「第2プラント」のリニューアル工事を見届けることができました。

左:第2プラントのインバーターターボ冷凍機 中央:センタープラントの炉筒煙管ボイラー 右:最大1,800mmφの冷水供給配管

日本には132の地域冷暖房供給地区がありますが(一般社団法人日本熱事協会Webサイトより)、冷凍機やボイラー・受変電設備は一般的に25~35年前後で更新時期がきます。ちょうど現在、1990年代に稼働し始めたDHCプラントの更新時期を迎えており、更新計画を立てるところからスタートする仕事がたくさんあります。

新築時にも将来の増設機器などを考慮した検討を行いますが、社会ニーズや熱需要予測の変化などを受け、更新時期が訪れた際には適切な計画になっているかの再検討が必要です。

「第2プラント」の更新計画を紐解くと、供給開始から10年の2007年に省エネ化を図るための1度目の検討、2019年にさらなる省エネとBCDを目指すための2度目の検討をしていて、その時に講じた2040年までの計画案に則り、着々と更新を進めていることがわかります。

稼働から20年後に更新計画の立案、25~35年後に工事するという、長い長いスパンの仕事をみんなで受け継いでいく仕事なのです。

左:歴代の担当と一緒に 右:センタープラントと第2プラントの更新基本計画報告書 

新築プラントの設計と工事監理から学ぶこと

みなとみらい21地区の開発が進むとともに、必要な冷暖房の熱も増えていきます。

そこで、今ある2つのプラントに加えて、新たな「第3プラント」の新築工事が進んでいます。第3プラントではみなとみらい地区で初の温水供給(既存は蒸気供給)を行います。また、事前の熱供給配管網の検討により、第3プラントから冷熱を供給することで、地域への搬送動力の削減が可能になることがわかっています。

「第3プラント」は新築建物の地下に計画されており、建物の工事とともにプラント工事を進めます。新築建物における申請スケジュールの管理や、建物側工事との調整など、プラントのリニューアル工事とは違った難しさがあります。一方で、新たな取り組みを行うことができ、今までの建物の設備設計の知識と経験を活かし、多様な提案を行うことでよりよいDHCプラントにしていくことができると考えています。

なによりも、日々新しく建物ができていく様子を見ながら、そこに計画したDHC設備が完成へ向かっていくことに並走できる、設計監理者として達成感のある仕事に携われていることが、とても幸運なことだと思っています。

Designer's Voice

設計者

都市エネルギー計画部 / 2009年入社

鈴木 悠子

Yuko Suzuki

設備設計事務所で建築家物件などの設備設計を経験したのち、三菱地所設計で超高層ビルの設計監理を担当、その後地域冷暖房を担当することになり、規模がどんどん大きくなる人生を送っています。
設備設計の仕事は、一生飽きないほどの新しい世界や知識が広がっています。
建物設備とは違う「DHC設備設計」に皆さんも興味を持ってくれると嬉しいです。

※所属はプロジェクト担当時点

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Update : 2026.03.31

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