THEME 01
三菱地所設計で「海外で働く」を実現する
仲田:私は、それまで海外プロジェクトに携わる機会が全くなかったのですが、当時担当していた丸の内の再開発プロジェクトが竣工したタイミングで、海外短期派遣制度を活用して、中国・上海にある当社の現地法人である三菱地所設計諮詢(上海)に2か月間行かせてもらいました。こういう制度があるけど、という話を聞いて、真っ先に手を挙げました。同じタイミングで工務職能と土木職能からも1人ずつ派遣されていたこともあり、お互い協力して日々の生活や言葉など、さまざまなハードルを乗り越えていった気がします。2か月だけの滞在ではあったものの、生活環境や設計プロジェクトにおける日本との規模や速度の違いに衝撃を受け、日本に戻って改めて異動の希望を上司に伝えて……、それから6年半にわたって現地を拠点に仕事をしました。谷口さんも去年、短期派遣で上海に来ていたけど、実際に体験してみてどうだった?
谷口:本店に比べて事務所規模が小さいこともあるかと思いますが、想像以上に人間関係が濃密で驚きました。現地には、日本語が分かる、年齢の近いスタッフが多かったので、意外とコミュニケーションには苦労しませんでしたね。私も派遣期間はわずか3か月間でしたが、中国ならではの成長を遂げているIT企業のオフィスの内装設計や、国内では味わえない大規模開発のコンペを構造エンジニアの観点からコーディネートしました。中国語もわりとすぐに聞き取れるようになって、現地での生活も楽しめました。ただ、プロジェクトの進め方には苦労したというか、日本との違いに戸惑うことも多かったですね。
仲田:1歩1歩、着実に詰めていく日本のやり方ともまた違って、「2歩進んで3歩戻る」かのような(笑)。当時は私の担当プロジェクトでも、すごく進んだな、と思ったら、いきなりストップする、といったことがよくありました。
谷口:中国の大手IT企業のオフィス計画の打ち合わせでも、アジェンダがほぼない中でいきなり物事が決まり、翌日にはもう詳細図が進んでいる、みたいなことがたくさんありました。「一度会社に持ち帰って検討する」といったクッションを挟まず、基本的には即断即決。とにかくその場で決めることが迫られているような感覚があり、確実にメンタルは鍛えられたと思います(笑)。こういうとき、イギリスではどんな感じなのかな?
渡邊:仕事の進め方そのものは日本とあまり違わない印象ですが、ロンドンは歴史ある建築が数多く残る街なので、開発許可が下りるまでが長いんです。なぜ、わざわざ新しい建物を建てなくてはならないのか、行政を説得するところから始めるのですが、いつ許可が下りるのかも、そもそも下りるのかも分からない。日本以上に「既存の建築物から再活用できる部分を探す」ところから考え始めねばならない、という違いはあります。
改修プロジェクトが多く、私自身も既存の建物をオフィスにリノベーションする、といったプロジェクトも担当しましたが、そのためロンドンにある設計事務所は大抵どこも中東地域の新築プロジェクトを手がけていました。中東でラグジュアリーホテルを設計するプロジェクトに関わった時は、気候や歴史から多国籍なチームでリサーチを重ね、時差や休日の曜日も違うメンバーと仕事を進めていくのがとても刺激的でした。
仲田:私は6年半で40近くのプロジェクトを担当しましたが、コンペやマスタープランも多く、残念ながら出向期間中に竣工した物件はなかったんですよね。あとは、私たちは現地では《外資系設計事務所》という扱いになるので、要求されるものごととして、現地のローカル設計事務所よりもさらに、「デザインアーキテクト的な立ち振る舞い」が求められるというか。それはそれで新鮮でもあり、面白味はあったと思います。私と谷口さんはアジア圏だったわけですが、渡邊さんは、なぜ派遣先にイギリスを選んだの?
渡邊:もともと海外には興味があって、トレーニー派遣制度の存在は就活の時に当社を志望した動機の1つでもあったのですが、入社後は目の前のことに必死で忘れかけていました(笑)。当時、海外の設計事務所との協働プロジェクトに携わり始めたのですが、チームにこの制度を経験した先輩が何人もいて、やっぱり私も行ってみたいな、と。相談した当時の部長や上司に背中を押してもらえたのも決め手でした。イギリスを選んだのは、学生時代はベルギーに留学していたので、今度は英語圏がいいなと。谷口さんも、上海に行かれる直前にそのプロジェクトで一緒でしたよね?
谷口:そうそう、ちょうど設計が佳境を迎えていた時期です。打ち合わせなどのやり取りも全部英語で進んでいたので、私もジワジワと海外経験の必要性を感じていました。これは帰国後に気がついたことですが、実は当社には海外での設計や海外事務所との協働プロジェクトが結構あり、意外と大小含めて数が多い。グローバル化の中で、これからもこうした業務が増えていくことを見据えると、語学力そのものというよりは、仕事の進め方やコミュニケーションの取り方といった経験が絶対に生きてくるだろうと感じます。

