CHAPTER 01
光でつくる「いい空間」を目指して
大学では建築学科で学び、当初は漠然と意匠設計に進むものと思い課題に取り組んでいましたが、周囲の才能豊かな仲間たちを見て、モチベーションの違いに心が折れそうになりました。そんな中、友人と応募したアイデアコンペで「自分は人と協力して何かをつくることが好きなんだ」ということを強く自覚しました。もともと建築に興味があったことに加え、この「人と協力しながら没頭できる」という点がとても向いていると思えたことが、この業界で働きたいと思ったきっかけになっています。
大学院では、建築をデザインする人をエンジニアの立場からサポートしたい、という想いから、光で「いい空間」をつくるべく、光環境を研究しました。照明デザイナーを目指す道もあったと思いますが、より大きく、建物全体の電気をトータルでマネジメントする方に惹かれたことに加え、当時、IoTやスマートビルという言葉がよく聞かれるようになり、こうした最先端技術を扱ってみたい、と組織設計事務所を目指しました。マルチに使える多用途の空間も興味深いですが、ユーザーや空間の使われ方をしっかり想定して設計できるオフィスビルに興味があり、この分野に強みのある三菱地所設計への入社を決めました。
入社2~4年目にかけて、ニコン本社ビル(東京都品川区、2024年7月竣工)の新築プロジェクトの設計を担当していました。先輩から任せてもらい、コラボレーションしている照明デザイナーと、照明やその制御の計画に取り組みました。今日あらゆる建築で要請される省エネ化ですが、そのためにはエネルギー負荷となる設計照度を落とさなければならず、しかし、あまり落としすぎると暗く使い勝手が悪い空間になってしまいます。シミュレーション上で試行錯誤したり、提案資料をつくったり、ときにはクライアントを実際の照明環境にお連れして、対話を重ねて一段一段階段を上がっていく。まさに「みんなで協力しながら没頭する」プロセスとして、とても面白いと感じました。
現在は別の企業の本社ビルの電気設備設計で、ドイツの照明デザイナーと協働しています。語学は得意というわけではありませんが、日頃はメールやリモート会議でやりとりし、来日の際は一緒にショールームに行き、「日本の器具もいいですよ」と提案しています。
