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連載|古図面の旅

第8回 三菱仮本社(第二十二号館)(大正7年~昭和46年)[桜井小太郎と大正建築]

住谷 覚

桜井による三菱仮本社(以下、仮本社、現三菱ビル南側)は、保岡が第二十一号館で試みたアメリカ式オフィスビルから何を継承し、発展させたのか。
平面はロの字型共用廊下の中庭形式とし、メインエントランスは交差点側ではなく中央に計画されている。多くの人々のライフスタイルに影響を与えた東京駅(大正三年)からのアクセスに配慮したと思われる。
次に矩計図を見ると、化粧煉瓦もしくは煉瓦の段数が図示されていることがわかる。仮本社(鉄骨煉瓦造)と第二十一号館(SRC造)の階高設定の考え方は明治期の煉瓦造の思想を受け継いでいる。
最後に大名小路側の立面図を紹介する。第二十一号館までは赤煉瓦のクイーン・アン様式を継承していたが、仮本社はセセッション風かつ白色化粧煉瓦貼りである。塔のデザインまで箱型としたファサードは、明治期のデザインを離れ、新しい時代を感じる外観デザインと言える。
ところで、なぜ、今までのデザインを踏襲しなかったのか。
石原信之の回想に「もう少し近代的なものにせよ」と外観のやり直しが命ぜられたとある。桜井が完成させていたチュードル式外観の図面はどこにあるのか!? 目下捜索中である。

  • 1階平面図

    1階平面図。建物中央に計画されたメインエントランス

  • 第二十一号館の矩計図

    第二十一号館の矩計図。化粧煉瓦の段数が図示されている

  • 第二十二号館の立面図(大名小路側)

    第二十二号館の立面図(大名小路側)。屋根の水平を強調した立面

  • 第二十二号館の矩計図

    第二十二号館の矩計図。煉瓦の段数が図示されている

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外観写真(大名小路側)セセッション風白色系の外観

外観写真(大名小路側)セセッション風白色系の外観