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2023.06.20

茶室「ベネチ庵」 第 18 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で展示中

株式会社三菱地所設計(所在地:東京都千代⽥区、代表取締役社⻑:谷澤淳一)は、イタリア・ベネチアのジャルディーニ・マリナレッサ庭園に2023年5月20日よりテンポラリーな茶室であり同時に家具であるパビリオン「ベネチ庵」を展示中です。これは2023年ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展における「TIME SPACE EXPERIENCE」(主催:European Cultural Center)にて発表しているものです。

資源の循環と地域性への応答

「ベネチ庵」は、今日世界的に注目される「サーキュラー・エコノミー」(『循環経済』:ストックを有効活用し、新たな価値を生む経済活動)の建築設計事務所における実践・実証の試みとして、イタリアの食品性廃棄物(パスタ、コーヒーかす、ワインのコルク栓)と循環性ある資源(再生紙)を建築材料として利用した茶室です。資源に加え、設置される場所の地域特性として、現地の緯度を設計に取り入れ、世界各地で展開可能な普遍性と固有性を体現するものとしています。
会期終了後にはさらなるアップサイクルとして、本パビリオンはパーツに解体され、さまざまに造形可能な家具として再構成・再流通させることを予定しています。

「ベネチ庵」の建築的特徴について

1.展示会場の緯度から形態を生成する

展示会場となるベネチアの緯度(45度)に着目。日射をパビリオン内に適切に導入/遮蔽するため、この角度を基調としたフレーム構成としています。フレームは、ミウラ折りを線材化して積層したもので、構造の要となるジョイントパーツは、力をスムースに流すため曲線的なデザインとしています。これは三菱地所設計にてR&Dの一環として研究が行われていた継手技術を展開したものです。
本パビリオンのシステムは、35度(東京)、1度(シンガポール)など、設置場所の緯度に合わせたデザインを展開することで、それぞれの地域性へと回答します。

展示全景

2.「サーキュラーなパビリオン」を実現する技術

3.庭園とアプローチ

ジャルディーニ・マリナレッサ庭園には、期間中、「ベネチ庵」のほかにも複数のアート、パビリオンが設置されます。「ベネチ庵」は茶室として、庭園内のアプローチや他の展示物を重要な露地(茶室に付属する庭)の要素と見立て、配置しています。

4.展示期間終了後の展開

約半年間の展示期間終了後、「ベネチ庵」は各パーツに解体されます。所有希望者は、オンライン上で自分がほしい形状をつくり、NFT化した組み立て図とセットで部材を提供する予定です。この際、3Dデータも提供し、3DプリンタやNC加工機を用いてパーツを作成、拡張することも可能。
家具化を前提に設計が進められた「ベネチ庵」は、家具部材により形成された茶室とも言えます。

左:庭園内に置かれた「ベネチ庵」。右:パーツから再構成された家具。天板はコーヒーかすからなるフードコンクリート。

スペシャルコメント

展示にあたり、建築家・西澤徹夫氏よりコメントをいただきました。

僕たちはさまざまな技術を用いて、とても複雑で機械のような建築や都市や社会を日々つくっている。一方でそのような技術は、人間の身体の機能や世界を感知する感覚を拡張してきた、とも言える。技術は、環境を変えてしまうこともできるし、僕たち自身をも変えてしまうこともある。小さな茶室「ベネチ庵」に集約された技術の数々は、それをつくり出すための緻密な手段であると同時に、地球の大きさや、その地球を移動することの今日的な意味や、文明を維持することの地球規模の代償、といった、僕たちの想像力をとても大きく広げて刺激していく力を、正しく持っている。そのような思索にふけることこそが、庵の機能なのだとでも言うように。

にしざわ・てつお/建築家。1974年京都府生まれ。2000年東京芸術大学修士課程修了。2007年西澤徹夫建築事務所開設。2023年より京都工芸繊維大学特任教授。主な作品に、「東京国立近代美術館所蔵品ギャラリーリニューアル」、「京都京セラ美術館」(青木淳と協働)、「八戸市美術館」(浅子佳英、森純平と協働)。第30回 AACA賞、JIA日本建築大賞、日本建築学会賞(作品賞)、第62回 毎日芸術賞、ほか受賞多数。


展示概要

ベネチ庵(VENATI-AN/TIME SPACE EXISTENCE)

展示期間2023年5月20日〜11月26日
会場ベネチア、ジャルディーニ・マリナレッサ庭園
(Riva dei Sette Martiri, 1364, 30122 Venezia VE, Italy)
設計・施工藤 貴彰(三菱地所設計・tyfa/Takaaki Fuji + Yuko Fuji Architecture
稲毛 洋也(三菱地所設計)
De Yuan Kang/カン・デユェン(三菱地所設計アジア)
制作協力町⽥ 紘太(fabula)…食品廃棄物部材製造
室島 満(室島精工)…食品廃棄物部材用金型制作
日本化工機材…紙廃棄物紙管製造
大出 治(シリカジェン)…超越液防水調合
中野 秀治(IWS)…コルク床材製造
茶の湯松村 宗亮(無茶苦茶
写真・映像横山 祥平, Yuta Sawamura
Special ThanksYAU(有楽町アートアーバニズム)、Joseph Canouil/ジョセフ・キャヌイ(三菱地所設計)
主 催European Cultural Center Venice Biennial “TIME SPACE EXISTENCE” 2023
WEBtimespaceexistence.com
主要用途パビリオン、茶室
寸 法1,700×1,700×1,700mm
構 造ミウラ折りフレーム積層構造
材 料廃棄物(パスタ、コーヒー、コルク、紙)

設計者プロフィール

ギャラリー

パーツ制作工程。①今回用いた食品廃棄物の一例。②パーツの金型制作。③廃棄物の粉末を金型に詰め、加熱しながら圧縮を施す。④完成したパーツ(写真はパスタからなるジョイント[上]、コーヒーかすからなる床材[下])。ここに耐水加工を行う。
上左:プレオープン日には、茶の湯の新たな可能性を拓く松村宗亮氏(無茶苦茶)による茶会が催されました。
上右:庭園内の通路を露地と見立てた展示。奥にベネチアの湾を臨みます。
下:パビリオン全景。角度によって複雑に疎密感が移ろいます。

以上

本件に関するお問合せ先

株式会社三菱地所設計 広報室
TEL 03-3287-5001

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