株式会社三菱地所設計(本店:東京都千代田区、代表取締役社長:谷澤 淳一、以下、三菱地所設計)は、当社が設計監理を担当する「(仮称)木挽ビルホテル計画」(東京都中央区銀座)が2026年10月1日に着工することをお知らせいたします。
本計画は、日鉄興和不動産株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:三輪 正浩)が所有するオフィスビルを建て替え、同社が運営主体となる長期滞在型ホテルとして再開発するものです。2029年の開業に向け、地域材の活用と多様な木造・木質化技術の導入を通じて、都市と地域をつなぐ新たな価値循環を創出する、環境配慮型ホテルの実現を目指します。
本建物は、東日本大震災からの復興に取り組む岩手県釜石市産の木材を中心に、350㎥超の木材を利用することで、持続性ある地域産業の振興に寄与しています。こうした取り組みと、木造と鉄骨造を組み合わせた合理的な構造計画・設計等が評価され、令和8年度優良木造建築物等整備推進事業における先導枠に採択されています。
■ 多様な木造・木質化技術から生まれる先進的な環境配慮型ホテル
本プロジェクトでは「都市と地域をつなぐ新たな木材利用の実現」を目指し、以下に紹介する大規模な木材導入を図るとともに、これを活かした設計を建築物の内外に展開します。
1.設備と耐震要素を集約し、積極的かつ合理的な木造・木質化を実現
建築物全体を木造化する場合、鉄骨造に比べて梁せいが大きくなるほか、梁への配管貫通にも大きな制約が生じます。また、銀座地区では地区計画により建物高さが制限されるため、その範囲内で必要な階数と階高を確保することが求められました。
そこで、建物中央部を鉄骨造とし、各種の設備配管を集約。耐震要素も中央部に集中配置することで、建物両端部の客室エリアは必要な階高を確保しながらも木造化することが可能となりました。
中央部の耐震要素は、①戸境壁に内装を兼ねるCLT耐震壁を採用するとともに、②外周に「耐震木ブレース」※を配置します。これらによって、建物全体に必要な耐震性能を確保することで、両端部の木造客室エリアは鉛直荷重のみを負担する構造計画としました。その結果、木造部材の断面を合理的に抑え、鉄骨造と同等の階高条件のもとで効率的な木造化を実現しています。
さらに、ここでは建物全体で「木鉄ハイブリッド柱」や「配筋付製材型枠」などの木質化技術を採用。構造方式から施工技術まで、多様な木造・木質化技術を組み合わせることで、総木材使用量350㎥を超える大規模な木材利用を実現します。
耐震木ブレース:木材を斜材として配置し、地震の際に生じる水平力を負担することで、鉄骨の柱梁にかかる力を低減するための耐震部材。CLT耐震壁と耐震木ブレースは、耐震要素であることから耐火被覆せずにあらわしとすることができます。本プロジェクトでは、こうした部材について積極的に木造化を図り、木ならではの素材感・質感が表出するビルを目指しています。
2.環境配慮型建築のシンボルとなる外装デザイン
本建物の外装は、建物中央部の外周に配置した「耐震木ブレース」と同じ傾斜角をもつ平行四辺形のユニットサッシで構成されます。木造・木質化技術を建築の外観に表現するとともに、木が枝を広げながら成長する姿をモチーフとすることで、地域材活用から生まれる持続的な循環を表現しました。木造・木質化への取り組みを街へ向けて発信する、環境配慮型建築のシンボルとなる外装デザインを目指しています。
3.多様な木造・木質化技術が生み出す特色ある客室デザイン
客室階では、エリアごとに異なる木造・木質化技術を採用し、それぞれに特色のある客室空間を計画しています。建物の東西両端部のコーナー客室では、木の柱・梁が屋内に現われ、木構造そのものを感じられる空間としています。演舞場通りに面する中央部北側の客室には、CLT耐震壁(戸境壁)や「耐震木ブレース」を表出し、木造技術を身近に体感できる空間を計画しました。また、中央部南側の客室は、「配筋付製材型枠」を中心とした木質化技術により、木の表情や質感を楽しめる空間を創出します。
こうした多様な木造・木質化技術を客室に取り入れることで、宿泊者がさまざまなかたちで木に触れ、その魅力を体感できる豊かな滞在環境を実現します。
■ 地域から東京へ 都市と地域が互いに支え合う持続可能な地域連携モデル
本計画では、岩手県釜石市産の木材を活用し、都市と地域をつなぐ新たな木材利用の実現を目指しています。木材需要の大きい都市と、豊富な森林資源を有する地域を結びつけることで、地域経済の活性化や森林資源の循環を生み出すものです。
釜石市には、日本製鉄の製鉄所が所在し、日本製鉄グループは長きにわたるつながりを育んできました。本計画では、震災復興に向けた地場産業の創出や、森林の適切な管理と利活用といった釜石市が抱える課題と向き合うべく、高い建材需要のある都市部と、森林資源を生み出す地域との間で、森林資源が循環する仕組みを構築します。都市部における地域材の活用を通じて地域振興に貢献するとともに、都市と地域が互いに支え合う持続可能な地域連携モデルの実現を目指します。
また、地域材の利用にあたっては、強度分布をグレーディング※によって把握し、それぞれの材ごとの特性を生かした構造計画としています。さらに、この地域ならではの資源である広葉樹についても内装や家具に用いて、積極的な導入を図ります。地域資源の特性を建築へ取り込むことで、都市部における地域材活用の新たな可能性を提案します。
グレーディング:木材の品質を正しく表示するために、含水率や強度を1本ずつ計測する検査のこと。
■ 先導的な木造・木質化への評価と環境認証取得
本計画は、都市部における先進的な木造・木質化の取り組みとして高く評価され、国土交通省による令和8年度優良木造建築物等整備推進事業『先導枠』に採択されました。『先導枠』は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、炭素貯蔵効果が期待される中大規模木造建築物において、先導的な設計・施工技術を導入するプロジェクトを支援する制度です。また、建築物の環境性能を評価する「LEED Gold」と、ランドスケープや敷地環境のサステナビリティを評価する「SITES Gold」の認証取得を前提として計画を進めています。建築物と敷地環境の双方から環境性能を高めることで、総合的なサステナビリティの実現を目指しています。
計画概要
Data
| 計画名称 | (仮称)木挽ビルホテル計画 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都中央区銀座七丁目205 番1、205 番12(地番) |
| 建築主 | 日鉄興和不動産株式会社 |
| 設計監理 | 株式会社三菱地所設計 |
| 内装設計 | 株式会社乃村工藝社 |
| 施工 | 熊谷組・住友林業特定建設工事共同企業体 |
| 用途 | ホテル・飲食店・自動車車庫 |
| ブランド | &Here |
| 客室数 | 130室 |
| 延床面積 | 約 9,742㎡ |
| 建築面積 | 約1,047㎡ |
| 構造形式 | S造、RC造、木造 |
| 階数 | 地上12階、地下1階(最高高さ約42m) |
| 着工 | 2026年10月(予定) |
| 開業 | 2029年10月(予定) |
| 環境認証 | LEED Gold、SITES Gold 取得予定 |
| 採択事業 | 国土交通省「令和8 年度優良木造建築物等整備推進事業」先導枠 |
関連部署プロフィール
木質建築ラボ
三菱地所設計R&D推進部内の木質建築ラボは、社内に点在する木造・木質建築の知見を集約し、研究と設計の両面から社会実装につなげる専門組織です。木を使うことを目的化するのではなく、性能・構造・表現を踏まえた「適材適所の活用」を重視。構造材・内装材にとどまらず、都市や建築のさまざまな要素に木を掛け合わせる考え方「X WOOD」を提唱しています。三菱地所グループ内各社や素材・技術パートナーと連携しながら、木の可能性を拡張し、よりよい都市と暮らしの風景を描いていきます。