DISCUSSION
Vol.12
岡部祥司
株式会社スノーピークビジネスソリューションズ エヴァンジェリスト、
NPO法人「ハマのトウダイ」共同代表
「社会のゆらぎ」をデザインする
――― 広場的空間の研究vol.1[前編]
2019/8/9
日本では、人口減少に伴うコンパクトシティ化によって、多くの空きスペースが生まれると予想されます。一方で、こうして生まれた空きスペースの活用によって、街が大きく変わる事例も出てきています。道路や公園、空地など、まちなかにある「広場的空間の使い方」にも注目が集まってきています。そこで私たちは、「広場的空間の研究会」を立ち上げ、その領域を牽引されているトップランナーの方々をお招きし、「これからの広場的空間のつくり方、使い方」のヒントを探っていきたいと考えています。第1回のゲストは、アウトドアを取り入れた働き方改革を企業に提案する、株式会社スノーピークビジネスソリューションズでエヴァンジェリストとして活躍されており、横浜で公共的空間の活用、地域活性化を手がけるNPO法人「ハマのトウダイ」の共同代表も務める岡部祥司さんです。
Qエヴァンジェリストという職能について伺わせてください。
A : スノーピークは、今やアパレルや地方創生コンサルティングなど、さまざまな事業を手がけていますが、もともとは1958年、金物の街として有名な新潟県・燕三条で創業したアウトドア用品メーカーです[スライド1]。我々は、キャンプはとても人間らしい時間の過ごし方であると考えています。まずはみんなで一緒にテントを張り、食事をつくり、太陽が沈んだら寝る。キャンプ2日目になると、体内時計が自然に近づいてきます。そこで今、スノーピークでは高度に文明化された都会での生活とは異なる環境の中で、現代人の「人間性の回復」をお手伝いすることをミッションとして掲げています。2016年には、愛知県のIT企業と共同で子会社となるスノーピークビジネスソリューションズを設立し、スノーピークが掲げるこのミッションに共感してくれる企業と手を組み、オフィスワーカーが人間らしく働ける環境づくりをお手伝いしています。最近では大手広告代理店や不動産会社、家具メーカーのほか、レンタルオフィスなどでも導入していただいています。「働き方を変えたいけれども、やり方がわからない」という相談をいただいて、解決策の1つとしてアウトドアを提案することもありますし、いきなりテントを設置したいという話から始まる場合もあります。ただしテントを導入すれば、必ず働き方が変わるわけでもありません。なぜテントを導入するのか、その趣旨を理解してもらうことが重要であると考えています。
ワークスタイルの変革には、①オフィスを変える、②働く場所を変える、③つながり方を変えるという3つのアクションがあると考えています。大きくハードを変えずに、例えばアウトドア用品をオフィス使いしてみることでも効果があります[スライド2]。欧米におけるオフィスづくりのトレンドになっているABW(Activity Based Working)ではすでによく使われていますが、アウトドア用品は軽く、たたみやすく、ゆるい雰囲気をつくれるのが特長です。オフィスの中にテントを張って打ち合わせをしたり、好きな場所にテーブルやチェアを動かしたり、リラックスした姿勢をとることができたり。さらに植栽のグリーンや音楽の力を融合させることで、環境を改善することができます。そうすると、いつもより打ち合わせが弾んだと感じる人や、パソコン作業もより集中できるようになったという人もいて、脳波測定でもその効果を確認することができました[スライド3]。さらにはテントを張って仕事をする「キャンピングオフィス」[スライド4]や、キャンプ場で企業研修[スライド5]をする提案も行っています。
実は今、日本でオートキャンプをする人は人口のわずか6%しかいません。残りの94%の層にアウトドアの効力を伝え、普及していくことが「エヴァンジェリスト」である僕の役目です。これまでキャンプは趣味として楽しむ人がほとんどでしたが、デジタル技術の飛躍的進化に伴ってオフィスを含むさまざまな分野でアウトドア化が可能になり、キャンプを広める絶好の機会であると考えています。
[スライド1]キャンプフィールドの中にあるスノーピーク本社
[スライド2]アウトドア用品をオフィス使いする
[スライド3]キャンピングオフィスを体験した約4人に3人がリラックス効果を実感
[スライド4]屋内や屋外にテントを張って仕事をする
[スライド5]キャンプ場での企業研修
[スライド1〜5:スノーピークビジネスソリューションズ提供]
岡部祥司/株式会社スノーピークビジネスソリューションズ エヴァンジェリスト
PROFILE : おかべ・しょうじ/1974年神戸市生まれ。大学卒業後、1997年竹中工務店入社。その後、横浜を拠点に活動し、2011年にWEBシステム制作会社・アップテラスを設立。現在、同代表取締役を務める傍ら、組織および地域活性化のためのコンサルティング会社・スノーピークビジネスソリューションズでエヴァンジェリストを務める。また、2004年に地域への関わりを深めるため、一般社団法人横浜青年会議所に入会し、2012年に理事長職を経験。NPO、行政、地元企業との関係が高まり、2014年にNPO法人「ハマのトウダイ」を設立。アウトドアオフィスやパークキャラバンなどの活動が評価され、2016年グッドデザイン賞を受賞。
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