Vol.02 マネジメント・
アドバイザリー業務

社員座談会 三菱地所設計の工務

Round-table: Construction Supervision of MJD

西村 由紀夫

工務部 ユニットリーダー

ゼネコンで施工管理に従事した後、東京都心での超高層ビルの監理業務に惹かれ、2006年三菱地所設計にキャリア採用で入社。工務部での監理一筋。

丸野 悟司

工務部 エンジニア

大学では構造設計を専攻。設計事務所のさまざまな部署のなかでも、特に建物ができる最後の工程まで見届けられる監理に魅力を感じ、三菱地所設計に2013年入社。2015年から2年間のコストマネジメント業務期間を除き、西村ユニットリーダーのもとで監理業務に従事。

ウィ ディオン

工務部 エンジニア

シンガポール出身。意匠設計を学んでいた学生時代、日本が好きで何度も来日。2017年三菱地所設計アジア社に入社し、シンガポールにて意匠設計業務に従事後、2021年より三菱地所設計工務部に出向。ものづくりの最前線での仕事を希望し監理業務に従事。

※役職名は掲載当時の内容になります

THEME 01

マネジメント・アドバイザリー業務とは

監理のノウハウを生かした
コンサルティング業務

丸野

多様化する顧客ニーズに対応するために工務部で数年前から新しく取り組み始めた業務が、コンサルティング(マネジメント)業務です。主に、クライアントの建築に関する困りごとについて、アドバイスやリサーチを行い、時には土地や建物の取得に関する相談や行政協議、テナントの入居調整なども行います。CM/PM*業務に近いですが、営業的な側面もありますね。

西村

普段、私たちがアフター対応含め監理の仕事をしていると、クライアントから「誰にお願いしたらよいのか分からないのだけど……」という相談が多々あります。「管理している建物の経年劣化状況を見てほしい」「別の建設プロジェクトの相談にものってほしい」など、クライアントにとって、設計や監理といった業務上の立て付けは関係なく、私たちを「建物に詳しいひと」として相談されているわけです。必要に応じて営業部門(営業推進部)に展開するのですが、私たちを頼ってお声掛けいただいていますので、まずはできるだけ工務部で引き受けたいという思いで始めました。

丸野

当社が担当するプロジェクトは、一般的には営業推進部や建築設計部、都市環境計画部、コンストラクションマネジメント部などが主管となり、そこから構造、設備、ランドスケープ、コストコンサルティング、工務を担う各部に仕事を振り分けていくのですが、私たちが引き受けると「工務部の主管業務」となり、私たちがプロジェクト統括の責任者として各部に仕事を振り分けます。これは、以前はなかったことです。社内には私たちの新しい挑戦を応援してくれる雰囲気があり、慣習にとらわれない柔軟な組織であることも当社のよいところと感じています。

西村

本当に風通しもよく、ある意味では自由に仕事ができています。職能に捉われない既存領域からの脱却は、設計事務所として目指していくべき姿だと思っています。

ディオン

監理業務をしていると、設計や工事に関するさまざまな知識、現場のマネジメント力、コスト感覚、スケジュール管理のノウハウなど、建設全般にわたる幅広いスキルが身に付きます。それを活かして、みずからビジネスチャンスを広げていくことは、とてもワクワクしますね。

領域を広げ、クライアントとの
信頼関係を構築する

丸野

数年前、私が監理を担当した大規模複合施設の現場は、発注者が複数社いて、他社がCMを行うプロジェクトでした。工事途中で、コロナ禍の影響を受け、テナントの入居に関してもいろいろな調整が必要になっていました。これらは本来、CM/PMの役割なのですが、発注者からのご要望もあって、そのマネジメントと調整を当社が引き受けることとなり、無事に開業を迎えることができました。そのクライアントとは初めてのお付き合いだったのですが、その後、他の新築案件のアドバイザリー業務などいくつもの新規発注をいただいたのは、こうした経緯から信頼を得ることができたからだと思っています。

西村

工事の途中で何のトラブルもなく無事に竣工できるのが何よりですが、大なり小なり何かしらの課題はどの現場でも起こります。それをひとつひとつ乗り越えることで、より強い信頼関係が築けるのは確かですね。

丸野

現場が終わった時に「また同じメンバーでやりたい」と言っていただけるのは嬉しいですし、「監理だけでもお願いしたい」と言われた時は最高です。

ディオン

シンガポールには、いわゆる「監理」という仕事はなく、もっと分業されています。監理者ひとりがここまで広範囲を担当することはありません。そういったことから日本では、監理者がCM的な仕事にも対応できるのだと思います。その分、専門用語もたくさん覚えなければならないので一生懸命勉強しているところです。また、日本の建設工事現場を初めて見た時に本当に驚いたのは、あまりにキレイで、整然としていたことです。高い建設技術ももちろんですが、アジアの他の国にとって手本になる点だと思います。

当社が設計監理を担った「KABUTO ONE」(2021年)では、コロナ禍の影響を受けた工事スケジュール等の調整を実施し、マネジメント力を発揮しました

*CM(コンストラクションマネジメント)は、専門性の高い技術者が、発注者側で建設プロジェクトをサポートする業務を指します。PM(プロジェクトマネジメント)は、発注者の求める条件に合った予算内・工期内でプロジェクトが完了するようにプロジェクト全体のマネジメントを行うことであり、上記のCMよりさらに広範囲な業務となります。

THEME 02

解体から新築までサポートする
幅広い守備範囲

クライアントのニーズに合わせ、
大小あらゆる業務内容に対応

西村

設計以外のことであれば、私たちは何でもお手伝いします。建物を建てるには、実に多様な問題が発生し、さまざまな手続きや書類が必要になります。しかし、一般的な企業の場合、社屋などの建物を新築するのは数十年に一度だったりするので、以前とは勝手が違ったり、未知だったりするケースが多いのです。同時に、普段付き合いのない会社にはちょっとした雑用は頼みにくいものですよね。その点、私たち工務部は、竣工後も不具合や維持管理についての相談に乗っており、タイムリーに時勢も把握しているため、気軽に何でも相談できる存在なのだと思います。嬉しい限りですね。

ディオン

業務の幅広さというか、西村さんをはじめ、工務部の皆さんの守備範囲と交友関係の広さには、本当に驚いています(笑)

丸野

先ほどお話したように、当社ではクライアントとの関係性を優先し、営業部門に限らずさまざまな部署が窓口になっていますが、建築設計部などが主管となるプロジェクトと違って工務部の場合は「困りごと」がきっかけで始まるプロジェクトが多い気がします。あと、最近多いのは、外資系企業からの相談です。

西村

きっかけはさまざまですが、お仕事をご一緒させていただいたことから始まることが多いですね。現在、新たなプロジェクトとして取り組んでいるのは、複数の建物の購入を検討されている外資系企業のお手伝い(図面確認、完成時の現場検査など)や、既存施設の自社ブランドへのリノベーションに関するCM・第三者監理業務です。タイミングよくシンガポールから出向されたディオンさんも担当に加わってもらっているのですが、打ち合わせでは前面に立ち、資料の翻訳などまでしてくれて、本当に助かっています。

ディオン

今は、2棟目のホテルリノベーションのマネジメント業務をしています。同社からは、さらにシンガポールの別の不動産会社も紹介いただき、関西でのホテルリノベーション計画のマネジメント業務を進めていく予定です。

クライアントが購入した既存ホテル(左)を、クライアントのホテルブランドへとリノベーション(中・右)した事例
当社はホテルの購入から、デザイナー・施工者の選定、コスト監理、会議運営などの一連の業務を担当しました

近年増加する、解体工事のアドバイザリー業務

丸野

最近多いのが、解体工事の「アドバイザリー業務」です。建物をつくるわけではないので、法的な工事監理者は不要ですし、もちろん解体工事をする会社にも現場管理者はいます。しかし、敷地や既存建物が特異であったり、周辺への配慮が特に求められたりする環境の場合、クライアント側には不安が尽きません。その不安を少しでも和らげることにも、私たちは役に立っていると思います。

西村

私たちには、丸の内をはじめとした都心での緊張感ある現場でのノウハウが蓄積されています。クライアントに寄り添い、自社の設計物件はもちろん、他社の設計物件や、新築予定がない場合でも、強いご要望があれば「解体アドバイザリー業務」として引き受けることもあります。工事に関する助言や発注先の選定サポート、工事の進捗確認、報告などを行います。

ディオン

新築する建物の図面と照らし合わせて、残置しても影響しない既存建物の基礎がないかを調べたりもします。余計な解体コストがかかってもったいないですから。そういうアドバイスがきちんとできるのは、すごく素敵なことだと思います。

THEME 03

マネジメント・アドバイザリーの魅力

ひととして成長できる「カラフル」な仕事

ディオン

当初希望したものづくりの仕事だけでなく、こういった幅の広い「カラフル」な仕事は想像してなかったので、毎日が楽しいです。ドラマティックなことがたくさん起こります。日英バイリンガルのスキルを活かせていることも嬉しいです。

丸野

マネジメント・アドバイザリーに限らず、監理という仕事を通じて、ものすごく経験値が上がった感じがします。特に新人の頃は、現場にどっぷり浸れます。本当にいろいろなことを経験できるので、ひととして成長できる。職業として魅力的だと思います。

西村

竣工引き渡し前日の、ひとがいないシーンとした風景と、竣工引き渡し翌日に関係者が大勢来て竣工を喜んでいる風景、この異なるふたつの風景の感動はなかなか味わえない。この仕事をやっていてよかったな、と思う瞬間ですね。

ディオン

私もクライアントの笑顔が何よりも嬉しいです。今、私たちで進めている開発案件では、計画段階から企画、設計、施工まで、一貫したマネジメントを任せてもらっています。今までにない大きな仕事なので、竣工したら絶対感動すると思います。

丸野

マネジメント・アドバイザリーの仕事を始めて業務が拡大したことで、普段の監理の仕事にも深みが増したと思います。視野が格段に広がり、知識やコミュニケーションスキルがバージョンアップした結果、監理業務スキルもおのずとレベルアップしたわけです。設計・監理で他社とJVを組むと、よく「そこまでやるの?」と言われるほどです。

西村

先ほども述べましたが、当社の工務部は風通しがよく、仕事を進める上でも個人の考え方・やり方が尊重されます 。もちろん本業である監理業務は他社にはないノウハウと経験をもち、組織設計事務所としての強みもたくさんありますが、私たちはクライアントのために領域を超えて他職能と協力し合う精神を持っており、必ず手助けができる自信があります。

丸野

それはきっと、工務部が現場を取り仕切って、施工者としっかりコミュニケーションをとり、品質を確保してきた実績があるからですよね。施工者も私たちを信頼してくれている自負があります。また、新卒採用だと、意匠、構造、設備の各設計部署にも同期がいるので、気軽に情報交換や相談ができるのもいい環境です。同期の頑張りによってモチベーションも上がります。学生時代、建築やものづくりは本当に好きだけど、何になりたいか分からない……とモヤモヤしていた自分がいましたが、今は自信をもって三菱地所設計の工務部で働くことを選んでよかったと言えますね。

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