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特集 歴史的建造物の「継承設計」

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[ Know-How 02

外部専門家との協力関係

建物一つひとつで手法が異なる「継承設計」。
何を、どのように後世に伝えるのか―、
建物ごとに異なる手法の決定には、さまざまな視点、幅広い知識が求められます。
当社がこれまで手掛けてきた30件近いプロジェクトでも、
数多くの歴史的建造物の調査などに関して研究者や専門家にご協力いただき、
時には共同で設計することも。
実績が増えるとともに、そのネットワークも広がっていきます。


※本特集は2016年12月に取りまとめたものです。各担当者の肩書きなどは、その当時のものです。

文化財建造物保存技術協会
「技術者」視点による「見えない箇所」の価値づけ
[旧長崎英国領事館] *進行中

免震レトロフィットは、上部構造や建築計画の変更は少ないものの、免震ピットの新設を含め、基礎部分での大きな変更があります。文化財建造物保存技術協会の來本雅之所長ほか担当の方と設計を進め、長崎市が設けている修理委員会の先生方と議論する中で、基礎だけでなく建物外周の側溝、建物と地盤レベルの関係も含め、見えない箇所も保存すべき対象であるという視点を欠いていたことに気づき、文化財としての建築を保存することの意義について改めて考えさせられました。

構造設計部
平川 倫生

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改修前の外観。

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現在は素屋根で覆われている。当社と文化財建造物保存技術協会が共同で耐震改修設計を行い、2022年度に改修工事が完了予定。

旧長崎英国領事館/国指定重要文化財  改修工事

所在地: 長崎県長崎市
旧竣工年: 1907(明治40)年
旧設計者: ウィリアム・コーワン
旧構造/規模: 煉瓦造/地上2階
継承種別: 保存・耐震改修
竣工年: 2022年度予定
設計者: 文化財建造物保存技術協会、三菱地所設計〈設計協力〉

文化財保存計画協会
目から鱗の保存方法論
[JP タワー]

文化財保存にはユネスコによる「本物を元の位置に残す」という原則がありますが、経年劣化した歴史的建造物にも、その価値を損なわない修理が必要です。設計者であり日本の石文化に関する研究者でもある文化財保存計画協会の矢野和之代表には、幅広い知識と専門家のお立場から、指導・助言を多数いただきました。特に外装タイル修理の方法論で悶々としていた時、「重要文化財のお寺も屋根は葺き替えますよ」と伺い、目から鱗が落ちる思いでした。

三菱地所設計諮詢(上海)
大西 康文

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外装モックアップの確認風景。白い外壁タイルは一部を保存・再利用したが、大部分は形状や質感を忠実に再現。

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旧東京中央郵便局舎のファサード、2スパン分を部分保存した。

JP タワー

所在地: 東京都千代田区
旧竣工年: 1931(昭和6)年
旧設計者: 逓信省営繕課(吉田 鉄郎)
旧構造/規模: SRC造/地下1階・地上5階
継承種別: 部分保存+開発、耐震改修
竣工年: 2012年

居住技術研究所
旧ビルを記録し、新デザインに生かす
[ 大名古屋ビルヂング ]

旧ビルは名古屋の人々に愛され、記憶に深く刻まれている点に価値があったため、解体に先立ち、居住技術研究所の加藤雅久代表に、その歴史的価値の記録のみならず、再開発に際しての貴重な知見、設計資料の一助となることも含めて、調査の協力をお願いしました。新ビルでは、ビル名称だけでなく、フォントも踏襲したサインを外装に掲出。エレベーターホールにあった大理石のモザイク壁画など印象的な部位を保存・再利用し、「記憶」の継承を図りました。

名古屋支店
水谷 誠(右)

建築設計一部
杉本 修一(左)

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旧ビルのエントランスホール。

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その壁の大理石(ブックマッチ)を再利用した新ビルの駐車場待合スペース。床の現場研ぎテラゾーは解体時に一部保管し、色やテクスチャーを 再現した。千成瓢箪をモチーフとした手摺も衝突防止柵として再利用。

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新ビル外観。

大名古屋ビルヂング

所在地: 愛知県名古屋市
旧竣工年: 1965(昭和40)年
旧設計者: 三菱地所(杉山 雅則)
旧構造/規模: SRC造/地下4階・地上13階
継承種別: 部分継承
竣工年: 2015年
設計者: 三菱地所設計
構造/規模: S造・SRC造/地下4階・地上34階