130th ANNIVERSARY

Youtube

MY +EMOTION

「人にフォーカスする」

機械設備設計部/R&D推進室
エンジニア平須賀 信洋

「省エネ性」の追求こそが設備設計の仕事、と思って駆け抜けた新人時代を経て、入社8年目の海外研修が、空調設計とは何なのかを改めて考えるきっかけとなり、自分のやってきたことを思い返しました。「快適感」のデザインこそ、私の目指す設備設計。平須賀信洋の+EMOTIONは、「人にフォーカスする」です。

「省エネ」のエキスパートを
めざした新人時代

私が入社した10年前は、世の中が「省エネ」一色の頃でした。どのプロジェクトでも、設備設計には省エネに対する高い目標が強く求められました。三菱地所設計に積み上げられた技術を1つでも多く、早く学ぶことに、そして、空調設備のエネルギー消費をいかに抑えるかという設計に明け暮れる毎日でしたね。その中で1つでも新しいことができないかと必死でした。超高層ビルで最先端の省エネ性を追求した「大手門タワー・JXビル」(2015年竣工)では、省エネに配慮しながら暑がりの人・寒がりの人が同じ空間で快適に働けるように、パーソナル空調を組み込んだ「タスクデスク」を考案しました。また、オフィスでは空調空気を空間全体に届けるため、天井裏などにダクトを設けますが、これをダクトレスかつ省エネにできないかと。気流を天井にはわして部屋の奥まで届けることができる、画期的な吹出口「Air-Soarer」の開発も行いました。

高効率の省エネビルをつくることに熱中した新人時代

オフィスの片隅で、パーソナル空調を組み込んだデスクを開発中

同世代の活躍に奮い立ち、海外へ

学生時代から海外には興味なし、一番苦手な科目は英語だった自分。しかし、久しぶりに大学の同期に会ってみれば、海外の巨大案件を設計していると言い、同じ業界で働く妻までが海外に単身赴任することになり、突然、外堀も内堀も埋められるように海外を意識し始めました。当社には「海外設計事務所トレーニー派遣」という研修制度があります。働いてみたい設計事務所を自分で探して交渉し、単身アメリカへ飛び込みました。そこでボスになった人からの一言が、設備エンジニアとしての姿勢を大きく変えることになります。

海外設計事務所で受けた衝撃

「自然換気の有効性とはなんだ?」。世界中で活躍する設計事務所でどこまで自分のスキルが通用するのかと意気込んで挑んだ初日、不意にくらった一撃です。今や当たり前に提案する自然換気ですが、いざその有効性を問われると「省エネルギー」以外の言葉は見つかりませんでした。ボスは「世界各国の医療費対GDP比率」のグラフを出してきて、「医療費が右肩上がりなのがわかるだろう。人を説得するためには世界の関心事を知らなければいけない。そう、健康だ」と。次に、機械換気よりも自然換気された室内の方が、菌の種類は多いけど、病原性のある菌の割合は少ないという研究データを持ってきて、「機械換気でキレイな空気を取り込んでいるつもりが、実は良い菌も除去している可能性がある、だから自然換気は有効である。そういう説得の方法もある」と。面食らいましたが、彼らは私の想像すらしなかった研究を武器にして、設計に取り込み世界を勝ち抜いているのだと、ワクワクしました。これって空調設計の仕事?と思うようなテーマの連続。さまざまな国の出身の同僚と一緒に、「ビタミンDと建築」というお題で設計するなど、今までの自分が鍛えた技術だけを頼りに、既成概念にとらわれないテーマで建築を考え続けた1年でした。

転機となった海外設計事務所での研修中

原点「人にフォーカスする」
に立ち戻る

海外研修を通して、既成概念を打ち破るために大切にすべきだなと感じたのが、今まで面白くて探求してきた自分の持つ技術たちです。ここで思い出したのが、駅舎における環境について書いた大学の卒業論文。研究の結果わかったのが、「当然空調されていない」と思われている駅のコンコースのような空間では、通常のオフィスより暑くても苦情が出にくいということ。エアコンが28℃設定になっていれば省エネであるとか、室温が26℃になっていれば苦情は来ないとか、一般的に言われていることだけでは、快適性は語れないという実態でした。この研究から、人は半屋外空間にいる時、暑い・寒いということに対する許容度が高くなり、通常のオフィスのような空調された空間よりも、人の感じる快適域が広がるということが導き出されたのです。半屋外空間ーー例えば、暖かな光や街の音、そよぐ風や雨のにおい、そんな自然を感じられる半屋外オフィスーーちょっと素敵だと思いませんか?海外に行く前には、このような卒業論文のテーマが、直接自分の設計内容に影響を与えるとは思ってもみませんでした。しかし、研究の結果にワクワクした学生時代の自分を思い出し、人が感じる「快適感」から空調設計、建築を考えることが、私の設計の原点なのではないかと思う今日この頃です。感じ方には個人差があるので難しいテーマですが、だからこそ面白い。人がどう感じ、どう動くのか、「人にフォーカス」して、これからの空調設計を描いていきます。そんな新しい私の色を三菱地所設計の130年、そしてこれからに、少しでも加えられていけたらと思っています。

半屋外環境の研究に取り組んだ卒業論文。駅コンコースで実測中

[インタビュー:2019.9.20]

+EMOTION 人にフォーカスする!平須賀

ARCHIVE