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「飽くなき追求心」

コンストラクションマネジメント部
コンストラクションマネジャー工藤 玲

発注者と設計者・施工者などの建築プロジェクト関係者の間に立って、品質・コスト・スケジュールを管理するCM(コンストラクションマネジメント)は、建築業界の中でも、とくに人が相手の仕事です。ますます多様化する発注方式、より高度に進化する建築技術に、真摯かつ貪欲に向き合いつつ、後輩育成にも注力。“社内外から相談される存在”を目指す工藤玲の+EMOTIONは、「飽くなき追求心」です。

高い技術力を武器に、
最適な提案をする

一般的に優れたCMr(コンストラクションマネジャー)とは、発注者のパートナーとなり、プロジェクトを予定通りに進めるための「潤滑油」のような存在と言われます。私はさらにその先、CMが入ることで、プロジェクトの品質がより良くなったり、関係者全員の満足度がぐっと上がるようなCMを目指したい。それに不可欠なのが、当社の高い技術力です。各設計部が持つ最新の情報や豊富な知識、建築プロジェクト全般に渡るノウハウをもとに、積極的な提案を行えるのが強みです。計画を検討することもありますし、予定されていた工程を抜本的に見直すこともあります。さまざまなCM会社がある中で、組織設計事務所の中のCMという、当社のスタイルがこれを可能にしていると思うのです。また、技術支援だけでなく、発注者・設計者・施工者がお互い伝えづらいところを橋渡しすることも重要な役目です。言い方ひとつで信頼が得られたり、崩れたりしますのでプロジェクト関係者がスムーズに、それぞれの能力が最大限発揮できるように、と思って仕事に臨んでいます。怒り役を買ってでることもあります。問題が起きて、それを解決した時に「CMを導入してよかった」と言われることが多いのですが、本来は問題が起きないようにするのがCMの役目だと思っています。品質はより良く、実感としては「何かトントン拍子で進んだね」と思っていただけるのが理想ですね。

担当した「宮古市中心市街地拠点施設整備事業」では、日本CM協会「CM選奨2019優秀賞」を受賞

日本建築積算協会の創立40周年記念大会(2015年)にて、若手専門家によるパネルディスカッションに登壇。発注者・施工者が伝えづらいことを調整するコストマネジメントについて論じた

目標とするCM像

そもそもは意匠設計がやりたくて建築の道に進んだのですが、大学で学ぶに連れ、構造設計も楽しい、設備設計も面白いなと、興味の幅がどんどんと広がっていきました。構造で卒業論文を書いた後、より幅広い領域を求めて大学院は生産系の研究室へ。日本CM協会の会長も務めていた教授のもとでCMの基礎を学び、当社のCM部発足(2001年)以来、初めてとなる新卒採用で入社しました。新社会人としての緊張、素人と変わらない建築の知識への不安がある中で、CM部の上司は本当に輝いて見えました。CMは業務の特性から、方法論にかなり個性が出ると思いますが、共通して、無理難題にもそれぞれのアプローチで解決に結びつけ、発注者をはじめとするプロジェクト関係者から絶大なる信頼を得ていました。自身で組み立てた方針に基づき、関係者の満足度を上げながらプロジェクトを生き生きと遂行していく姿をみて、カッコいい!楽しそう!自分もできるようになりたい!と強く思いました。

意匠も構造も設備も楽しかった学生時代。ソフトボール大会(左)と学会発表(右)

上司・先輩のノウハウをかりる

「CM業務をするなら、コアとなる専門分野があるべきだ」という意見があります。プロジェクトをリードするために、専門分野があるとそれを軸にマネジメントができるからです。入社当初「新人がCM部?別の部でキャリアを積んでからがいいのでは?」という声もありました。ですが、当時の部長をはじめ、CM部の上司からは「建築における知識は必要だが、マネジメントの専門職能なのだから、マネジメントをコアに新人を育てるべきだ」と心強い言葉をもらいました。そして、社内に建築に関するあらゆる専門家がいるのだから、専門分野でわからないことがあれば教えてもらうようにと。とにかく知識を広げるべく、何でも聞き、経験させてもらおうと研修先のコスト・工務、社内のプロジェクトメンバーの方々など、多くの人の胸を借りました。プロジェクトの品質をより良くするためにも、範囲を限定せず、広く検討・追求する姿勢が大事だと思っています。皆さん、本当に丁寧に教えてくれます。忙しくても若手教育を大事にするという、当社の良さを実感する場面です。現在では「CM職能」というマネジメントを専門とする職能もできました。CM部に新入社員として入ってくる後輩たちには、ぜひこの環境を享受して、さまざまな人と知り合って、沢山の現場を経験して、新しい情報を貪欲に求めてほしいと思います。

新人時代。研修先の元コスト管理部メンバーとのスキー旅行

社内で後輩と打ち合わせ。若手教育重視の伝統を引き継ぎ、範囲を限定せず追及するように伝えている

“煙たい存在”から“相談役”へ

印象に残っているものに、入社4年目から4年にわたって担当した、銀座の老舗文房具店・伊東屋の本店建て替えプロジェクトがあります。ゼネコンに設計・施工一括で発注されたプロジェクトだったのですが、銀座通りとあづま通りに面する非常に細長い敷地形状で、まず設計の難易度が高い。そして創業111周年に迎え、将来に向けた新しい形態の小売店舗を生み出す、という困難な課題がありました。そこで本体と別に、コンセプトワーキングでソフト面の検討を行うというプログラムで、プロジェクト関係者が同じ方向を向いて取り組めるように進めました。プロジェクトの初期段階では、「CMが入ると品質やコストに対して確認が入る、対応が大変である」など、設計者・施工者から“煙たい存在”に思われることもあります。ですが、とにかく何ごとも誠実に、技術と真摯に向き合い続けました。発注者の魅力に後押しされて、少しずつ信頼を得て、ようやく“(発注者だけでなく)みんなの相談役”に。そして関係者全員が同じ方向を向き、いいチームワークが生まれていることを実感する出来事が起きたのです。工事も最終段階、仕上げの最中に、キレイに納まっていない箇所が見つかりました。建築施工者、内装施工者、家具P.A.(調達代行)の3者が関わっている箇所で、普通であれば責任の押し付け合いです。でも、誰に言われるでもなく、3者がアイディアを持ち寄り、どうやったら一番うまく納め直せるかを話し合い、自分にやらせてほしい!と積極的に対応してくださったのです。チームで最高の品質を追求できる、仕事冥利に尽きる瞬間でした。プロジェクトチームが一丸となってアイディアを練る、より良いものを追求することは刺激的な経験で、それが形になると喜びもひとしおです。CMって楽しいです。

CMの醍醐味を実感した「伊東屋銀座本店建て替えプロジェクト」。施工品質に目を光らせる(上)。屋上で撮影したチームメンバー(下)

CMの醍醐味を実感した「伊東屋銀座本店建て替えプロジェクト」。施工品質に目を光らせる(左)。屋上で撮影したチームメンバー(右)

[インタビュー:2019.10.7]

+EMOTION 飽くなき追求心

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