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連載|ものづくりの視点

家具の耐震対策を

深澤 義和

7月21日、政府の地震調査研究推進本部より2009年度版の全国地震動予測地図(同本部のホームページ参照)が発表された。予測の中で、全国各地で今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が示されている。

この予測は、2005年3月の公表以来、地震動予測手法や地下構造モデルなどの改良が重ねられたものであり、昨年4月の予測に変更が加えられ、大多数の都市で確率が高くなっている。県庁所在地でみると、盛岡の0.7%から静岡の89.5%まで幅があり、東京は、19.7%、大阪は59.5%、名古屋は44.4%である。確率がある程度高ければ、それは毎年少しずつ高まっていく。予測確率をどう見るかはやっかいな問題であるが、地震調査研究推進本部では、0.1%から3%をやや高いとし、3%以上を高いとしている。

数十年内に(明日かも知れないが)震度6弱の地震動に見舞われるとした場合に、地震対策をさらにすすめるポイントとして、(1)震度6弱で無被害とする設計の採用、(2)耐震診断、耐震補強を急ぐこと、(3)家具什器の地震対策の3点を強調したい。

現在の建築基準法では、稀に起きる地震として震度5弱程度を想定し、無被害であることを目標としている。また、極めて稀に起きる地震として震度6強から7程度を想定し、倒壊などの致命的な被害を受けないことを目標としている。このことから、現在の建築基準法で建設された建築物は、震度6弱に対し、致命的な被害を受けないまでも、さまざまな被害が起こり得ることになる。もちろん、すべての建築がそうなるわけではなく、超高層建築や、免震・制震構造を取り入れた建築物など無被害レベルを高くするように意図された建築物では被害が小さいであろう。数十年内に震度6弱に見舞われると覚悟し、それでも無被害にするには建設工事費は多少増加する。しかし、その増分は被害後の補修や補償費用等を下回ることになろう。

現在の建築基準法が適用されていない1981年以前に建設された建築物は、震度6弱で倒壊などの致命的な被害となるかどうか分からない。致命的な被害を防ぐためには、耐震診断を行い、必要に応じて補強することが必要である。補強ができないという場合でも、何が起きるか、どこが危ないかなどの知恵があれば、最悪の被害は防げるであろう。

震度6弱に備える場合、けがを防ぐことも重要である。けがといっても、地震後の復旧活動や生活に支障が出ることになれば、その影響は計り知れない。けがの発生要因は、圧倒的に家具の転倒や移動である。大地震時の家具による被害については、Eディフェンスという大型振動台での再現実験や起震車での体験で周知されてきているが、震度6弱ともなればすさまじいことになる。キャスター付きの家具は動き回り、背の高い家具は倒れる。天井よりつり下げられた照明器具は揺れて天井にあたる。タンスなどの上に置いてあるものは落ちる。台の上に置いてあるテレビはすっ飛ぶ。さて、家具の転倒、移動を防ぐ必要性が分かったとして、現実的にどうしたらよいか。家具や建物を傷めたくない、見た目が悪いと躊躇することもあろうが、いろいろな対策を考えた上で判断することを助言したい。例えば、寝床の近くの台の上に置かれたテレビが寝床を直撃しないようにという問題の場合。テレビと台を固定することが基本であろうが、テレビを下に降ろす、寝床を高くする、テレビに緊急地震警報をつける、小さなテレビにする、テレビを遠くへやる、捨てるなどが考えられる。そうした中から、やっぱり固定するしかないといった考えに至れば、納得できるのではないだろうか。

家具の耐震対策を