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連載|古図面の旅
三菱地所設計(以下、当社)は、1890年(明治23年)に三菱社の内部に設置された「丸ノ内建築所(まるのうちけんちくどころ)」にはじまる、わが国で最も歴史のある設計組織です。当社が管理する建築図面は、1894年(明治27年)に竣工した三菱一号館から現在に至るまで、途切れることなく残されています。現在、当社「古図面研究会」によって順次調査分析が行われており、膨大な図面の情報から各時代の設計思想や建築技術を知ることができます。 設計者たちは、各時代に何を考えて設計に取り組んだのか、図面を残すことで後世に何を伝えようとしたのか、そこにはどのようなレガシーがあるのか。図面1枚1枚を広げて見えてきた奥深い世界へご案内します。
目次
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筆者
掲載年月
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第27回第25号館(仲14号館)→三菱重工ビルヂング(現・丸の内二丁目ビル)
桐澤 航
(2021年秋)
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第26回丸ノ内建築所はどこにつくられ、どんな建築だったのか?
江島 知義
(2021年春)
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第25回丸の内仲通りの建物の床はナゼ木造なのか?
江島 知義
(2021年冬)
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第24回東京停車場前三菱本社計画(大正6年)[2度も頓挫した三菱本社計画]
鰐淵 卓
(2020年春)
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第23回丸ノ内ガラーヂビル(昭和3年)[わが国初の自動車車庫専用ビル]
野村 和宣
(2020年冬)
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第22回静嘉堂文庫(昭和8年)[勾配屋根の増築]
谷口 洵
(2019年秋)
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第21回常盤橋アパート(昭和8年7月)[幻の東京駅前 常盤橋アパート]
住谷 覚
(2019年夏)
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第20回横浜正金銀行東京支店(大正11年)[関東大震災後の補強工事図面が語るもの]
鰐淵 卓
(2019年春)
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第19回三菱壱号館付属倉庫(東九号館西別館)[戦前における究極のリノベーション]
須藤 啓
(2018年冬)
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第18回三菱合資会社銀行部本店(大正11年)[桜井小太郎・古典様式を攻める]
東海林 孝男
(2018年秋)
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第17回新丸ビル(昭和27年~平成16年)[ホテル計画からオフィスへ]
江島 知義
(2018年夏)
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第16回八重洲ビルヂング(昭和3年)[DNA継承のキーマン・藤村朗の代表作]
野村 和宣
(2018年春)
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第15回丸ノ内ビルヂング(大正12年)[桜井小太郎の様式美]
須藤 啓
(2017年冬)
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第14回三菱銀行本店(大正5年)[100年前の構造図]
篠田 悟
谷口 洵(2017年秋)
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第13回第四号館(仲十号館一号)[丸の内のインフラ]
東海林 孝男
(2017年夏)
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第12回仲12号館6号新築[川元良一の図面]
野村 和宣
(2017年春)
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第11回第八号館(不明〜明治40年)[第八号館の店舗ファサード]
住谷 覚
(2016年冬)
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第10回番外編 小岩井農場の歴史的建造物群
野村 和宣
(2016年秋)
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第9回臺灣(たいわん)銀行東京支店(大正5年~昭和後期)[桜井小太郎に見る基礎形状の変遷]
野村 和宣
(2016年夏)
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第8回三菱仮本社(第二十二号館)(大正7年~昭和46年)[桜井小太郎と大正建築]
住谷 覚
(2016年春)
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第7回第二十一号館(大正3年~昭和36年頃)[曾禰から保岡、そして桜井小太郎へ]
江島 知義
(2015年冬)
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第6回「整理図」と分類されていた図面群(抜粋)
野村 和宣
(2015年秋)
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第5回丸ノ内自第壱号至第拾参号各館地中階及地盤對照圖(内田祥三)[過去からのメッセージ]
大西 康文
(2015年夏)
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第4回三田小山町 松方公爵邸(明治38年11月)[変わるものと、変わらないもの]
住谷 覚
(2015年春)
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第3回第二十一号館(大正3年~昭和36年頃)[棟割長屋から大規模オフィス建築の原型へ]
江島 知義
(2014年冬)
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第2回第十三号館(明治44年~昭和35年)[ボールト建込詳細図]
野村 和宣
(2014年秋)
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第1回三菱五号館(明治38年~昭和38年)[南側立面図]
野村 和宣
(2014年夏)
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筆者プロフィール
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野村 和宣(のむら かずのり)
建築や都市を鑑賞する際、専門家の意識を取り除いて、できるだけ素の人間としての自分になって観るように心がけています。美味しい料理が理屈なく美味しいと感じられることと同じように。
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須藤 啓(すどう ひろむ)
学生時代から歴史的建造物に興味がありましたが、入社して保存復原に携わることができました。尺寸で書かれた古図面を読み解くのはとても楽しいです。当時の設計者の立場になって考えているうちに、その時代にタイムスリップしたような不思議な感覚になります。
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江島 知義(えじま ともよし)
歴史的建造物に関わる楽しみは、推理小説を読むような謎解きにあります。なぜ、このデザイン? 納まり?など、原設計者と会話をするように謎を解き、オリジナルを探し求め、そこに新たな価値を見い出すようにしています。
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住谷 覚(すみたに さとる)
古図面と出会って数年。設計者の思いを想像しながら向き合うことを大切にしています。描き込まれた大先輩のスケッチに共感したり、逆に悩んだり。図面に残された謎が解けた瞬間が一番の楽しみです。
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大西 康文(おおにし やすふみ)
古図面は、日本が国際化し工業と産業が発展していく過程で、その時々の設計者が建築の細部を改善すべく試行錯誤した過程を教えてくれます。図面から伝わってくるものづくりへの情熱に、同じ技術者として心癒される今日この頃です。
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東海林 孝男(しょうじ たかお)
大先輩方がどんなことを考えながら、この図面を描きあげたのか。古図面を見ていると、私たちと同じことに悩みながら設計している姿が想像できます。私にとって古図面は、検討のプロセスが感じられることが一番の醍醐味です。
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篠田 悟(しのだ さとる)
建築技術や安全対策など、今では当たり前のことが、大型機械がない時代では、大変な労力を必要としたことが容易に想像できます。当時の技術でどう作ってきたのか、謎を紐解くのも楽しみの一つです。
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谷口 洵(たにぐち しゅん)
現代では当たり前の設計方法も、先人たちが苦労を重ね築いてきた歴史があります。単に古い図面というだけでなく、なぜ私たちが今の設計をしているのか、古図面からそこまで読み解けた瞬間、最高の気分になります。
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鰐淵 卓(わにぶち たく)
自分が身を置く街や環境がどんな経緯で今の姿になったのか。古図面を見る時、時代の空気や設計者の気概を臨場感たっぷりに感じながら、今の当たり前の都市・建築が図面に描かれたまさにその瞬間に立ち会うことができます。