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連載|ものづくりの視点

建築製品の海外調達に思う

狩野 大和

最近の大規模建物においては、外装をはじめ内装および鉄骨などについても、海外製品が使用されるようになってきている。かつては鉄鉱石・石材・石油など素材の輸入が多かったが、最近は建築の重要な部位について海外製品が輸入される。特に、私自身がかかわっている大型のビル・官庁施設(PFIで整備する施設)などでは、外装の花崗石製品、アルミカーテンウォール(ガラス組み込み)、内装の大理石石材、造作家具についても海外製品が多く採用されている。また、最近は少量ではあるが外装のプレキャストコンクリート板や鉄骨の海外製品も採用され始めている。

今年3月、国交省が発表した建設工事施工統計調査報告の平成20年度実績によると、元請け完成工事高が2000年度(平成12年度)70.5兆円であったが2008年度(平成20年度)では51.8兆円と73.5パーセントに低下している。その間の海外製品利用推移を見てみると、全国建築石材工業会の資料では建築石材では全体の使用面積が57パーセントに減少する中、加工されたオーダー品の海外製品割合は21パーセントから76パーセントに増加している。それと連動するように、国内に500台ほどあった大鋸機(原石を板に加工する設備は)は10台ほどまで激減している。また、アルミカーテンウォールについては、現在国内は数社グループに統合されているが生産工場の海外シフトが強まっており、同時に大規模建物の外装はユニットカーテンウォールが積極的に採用され、ガラスを含めた海外製品の割合は増加する一方である。あるメーカーではオーダーアルミカーテンウォールの海外製造の割合は60パーセント、そのうち90パーセント以上は板ガラスが組み込まれている。

海外製品の採用のメリットは国内製品に比べて安価なことである。バブル時は膨大な建築需要に対し国内メーカーの生産が追いつかず、海外製品を使用せざるを得なかったが、最近はコストダウンがより鮮明になり、海外製品の採用が増えてきた。海外メーカーは日系・現地資本メーカーを問わず、労働コストや土地・企業の法人税などが日本に比べて安く、さらに工場用地が広大であり、最新の工場設備の導入などによる生産ラインの合理化が可能であり、総合的に安価な製品が供給できるのである。今後、円高や東南アジア諸国と日本のFTA(自由貿易協定)などの締結により、輸入関税が緩和されれば、海外製品の採用はさらに増えるであろう。

ここ数年、国内の完成工事高は民間の発注は横ばいだが、公共の発注は減少傾向で、今後も全体の完成工事高も減少していくものと思われる。一方で建築製品の海外依存率はますます増加し、国内製品の採用は減少が予想されるが、この状態に問題はないのだろうか。日本の製品はJISなどの日本独自の規格があり、製品についてのある程度の保証がなされているが、海外製品にはJISの規格に合わせて生産されていないものが多数あり、それらはVE(バリューエンジニアリング)という名目で採用がされることが多い。海外メーカーは設計仕様に基づき生産するのが一般的であり、国内メーカーに比べてアフターを含めた製品となっていないことが多いと思われる。また、海外製品の採用は製品の生産・移動・保管を含めて総合的に検討する必要がある。最近では、中国の労働者のストライキやタイの国内デモなどで納入が遅れた事例があり、今後注意する必要がある。このように海外製品と国内製品を同一基準の製品かのように受け入れている現状には、思わぬ危険が潜んでいるといえるだろう。

建築製品の海外シフトはますます国内メーカーの弱体化を招くものと思われる。大理石製品の加工など特殊な製品の高度な加工や施工技術の後世への引き継ぎなど、ものづくりの分野での国際競争力を保つことを考える時ではないだろうか。そもそも、公共の建物は国内の税金で建設されるものである。納税者である国内メーカーの製品の採用をためらう必要はないと思うが、いかがだろう。

建築製品の海外調達に思う