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連載|ものづくりの視点

中国の超超高層建築はどうなっていくのか

深澤 義和

大阪で高さ300mに達する超高層建築が出現し、それまで日本一であった横浜ランドマークタワーの高さ296mをわずかに超えた。日本では長らく31mの高さ制限があり、その高さに相当する7~9階建てを高層建築と呼んでいた。より高い建築の需要が高まると同時に、振動解析を取り入れた設計手法が確立されることによって、31mを超える超高層建築が出現した。現在では、高さ60mが法的には超高層建築とされているが、高さ60mを超える建築が次々と建てられていく中で、今では100mを超える建築を超高層建築と呼んでいるようである。

中国の高層建築についてはどうであろうか。現在の建設ブームの中で、100mを超す無数の高層建築が建ち、300mを超す超高層建築が毎年数十棟建設されていると聞く。さらに400m、500m、600mという超超高層建築が各地で建設中、あるいは計画中である。

耐震設計に関するテーマを中心に、日本と中国の建築構造技術者が一同に会する日中建築構造技術交流会が20年前から開催されている。今年は超高層建築、長周期地震動の問題をテーマとしたワークショップが開催された。中国側の問題意識は、500m、600mという超超高層建築の耐震設計をどのようにすすめていくべきかと言うことであった。

中国は、日本と比べ地震が少ないということはなく、地域によっては日本と同程度の地震動の発生が予想されている。また、2008年の四川大地震では、遠く離れた北京、上海でも高層ビルの大きな揺れが報告されている。日本では、数年前より長周期地震動対策が検討され、東北地方太平洋沖地震では、現に長周期地震動を経験している。そうした日本と中国それぞれの状況についての情報交換ともいえる今年の検討会であった。

検討会で筆者が理解した中国での耐震設計基準では、高さにかかわらず満たすべき基準があって、その基準を満足させるためには一般的な方法では超超高層建築の設計が不可能となるようである。そこで、建物を建築する側は高度な解析を行うことによって、設計を可能とする方法を模索している。その場合の課題のひとつは「解析が妥当かどうか」ということで、解析システムの比較検討がなされた。細かな条件を必ずしも共通にしない中での比較であったため、日本、香港のシステムを含めて大きな差となった。中国で具体化している超超高層建物の紹介、日本で長周期地震動を考慮した高層建築の検討結果を紹介した後、討論が始まった。

日本側からは、高さ制限撤廃と共に始まった超高層建築の耐震設計の発展の中で、耐震安全性を確保し、風に対する設計や不測の事象に対する安全性も考え設計をすすめてきたこと、長周期地震動の対策として構造的な被害と同時に、居住性や非構造部材の被害を防ぐ観点で取り組んでいることなどを紹介した。あわせて日本では、高層化による建築物の効率が重視され、300m以上の超超高層建築を建てようとする動きはないと説明した。

討論会の最後に、中国側から今日の討論会は大変有意義であったという挨拶があった。来年に予定されている南京での日中建築構造技術交流会においても、超高層建築や長周期地震動対策については主要なテーマとして議論される予定である。中国の超超高層建築はどうなっていくのだろうか。

中国の超超高層建築はどうなっていくのか