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連載|古図面の旅

第3回 第二十一号館(大正3年~昭和36年頃)[棟割長屋から大規模オフィス建築の原型へ]

江島 知義

現新東京ビル街区に、概ね4分の1の大きさで建っていた第二十一号館は保岡勝也の設計である。第十三号館で煉瓦造時代の事務所建築の完成をみた一丁倫敦の建築群は、第十四号館以降、主体構造がRC造へと変化しても棟割長屋形式の平面計画は踏襲されていた。第二十一号館では各テナントがエントランスホール(平面図「八角広間」)、階段、トイレを共有する現在の賃貸事務所建築同様の大部屋形式の平面計画になり、ファサードも横に広がる事務室空間に呼応するように、ポツ窓形式から横連窓を思わせる連続した大きな開口部へと変化している。ただし、矩計図には仕上げに煉瓦を使うことが明記され、一丁倫敦の街並みと調和させ、街全体をつくろうとする意識がうかがえる。また落成時の様子が掲載された『建築雑誌第331 号』に、「廊下の點燈掃除、水料。下掃除及昇降機等の経費は貸主の負憺」とあり、第二十一号館には、今日の大規模オフィス建築の原型だけでなく建物管理の思想も見い出せるのではないだろうか。

二十一号館

左上:二十一号館外観写真
左中:横連窓を思わせるファサードの変化
左下:左下が八角広間(エントランスホール)
右上:テナントの入れ替わりを考慮した脱着式のテナント名板(現在のテナント集合サイン)
右下:RCの下地に煉瓦貼りの仕上げ

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