皇居外苑濠の水質改善に向けた取り組み
本施設は民間ビルの地下に濠水浄化施設と貯留槽を一体的に配置した上で、隣接する大手濠から濠水を取水し、敷地内で浄化・貯留し、大手濠に処理水を放流する形で、濠水の循環浄化と一時貯留機能の確保を実現している。
大手濠に隣接する民間事業者側のビル再開発地区の立地特性を活かし、民間ビルの地下に濠水浄化施設と貯留槽を併設する形で建設を実施した。
道路下に取水管・放流管を敷設するに当たっては、道路占用許可を取得し、推進工法により施工を行った。
近年、気候変動による自然災害が頻発しており、人々の環境配慮に対する意識はさらに高まっている。マンションやニュータウンにおける住宅地を購入する際、環境配慮は1つの付加価値としてのブランドとなり、また、ESG投資がさらに拡大すると企業価値における環境配慮の重みはますます大きくなることが予想される。
本事例で対象となった皇居外苑濠は国内外から多くの観光客が集まる、首都東京の中でもアイコン的な水域であるが、かつては水源不足や水質悪化による美観低下や悪臭が問題視されていた。
そこで、官民連携の働きにより民間開発計画地内に浄化施設および貯留槽を整備し、水量の確保や水質改善に貢献する施設を整備した。また、雨水の有効活用や災害時における防災利用が可能な施設としており、水質改善だけではない利活用を目的としている。
さらに、このような環境改善の取り組みは特定の事業者のみで行うだけでなく、広く世の中の人に知らしめて、取り組みを広げていくことが重要である。本事例では浄化施設の部分を見学施設として設えることで社会的や意義や浄化の仕組みを分かりやすく説明できるようにした。
このように、水質改善による環境配慮だけでなく、災害時における防災利用や取り組みの周知を組み合わせることで、より魅力的なまちづくりに貢献できるものと考える。
竣工年 | 2015年 |
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所在地 | 東京都 千代田区/ |
用途 | 水質浄化施設(B1F~B2F)、貯留槽( B3F~B5F) |
テーマ | スマートシティ |
備考 | 処理可能量 3,000㎥/日 貯留量 3,000㎥ 最大深度 35m(貯留槽深さ 17.5m) 工法 道路下の管路は推進工法(φ800)により布設 |
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