WORKS

Vol.11

木質建築

CLTの床構造システム

2020/01/24

中高層建築の床を木造にする。

6階以上の事務所建築で、CLTを構造材に使用した国内最初の事例ができました。国産材の有効活用が求められている今、戸建て住宅だけでなく、中高層の大規模建築にも木材使用の可能性を拡げなければなりません。そもそも木造には鉄筋コンクリート造や鉄骨造にない長所があります。建物の重量が軽減され、杭などの基礎躯体の負担が減る、乾式工法でスピード施工を後押しするなど、オモテには出てこない隠れた木造の魅力も掘り起こしていきましょう。

PARK WOOD office iwamotocho

構造体である床にCLTを使う技術

CLT(Cross Laminated Timber)は、ラミナと呼ばれる板を繊維の向きを90度変えながら積層させた木質系材料で、強度の高い面材として幅広く使用可能な注目の素材。これを床材に使うのですが、木造でもっとも難しい課題はやはり耐火性です。CLT床上に石膏材料を打設し、スラブ裏の下階天井面を強化石膏ボード及びケイ酸カルシウム板で挟み込んで耐火性を担保します。

イノベーションのポイントは、異素材である鉄骨とCLTの接合方法。ここではCLTに精密な切削加工を施して鉄骨と精密に緊結するような方法はとりません。所定のサイズに工場で裁断したものを、現場で鉄骨の上に載せるだけ。CLT表面に一定間隔でラグスクリューのビスを打ち付け、そこにトップコンクリートを打設して終わりです。ビスがCLTの横ズレを防ぎ位置が固定されるのです。

8階建ての事務所。柱・梁は鉄骨造ですが、3階から上のスラブの大部分をCLT床としました。
3、4階床面は2時間耐火仕様(強化石膏ボード+ケイ酸カルシウム板)。
5~8階床面は1時間耐火仕様(強化石膏ボード)と使い分け、オーバースペックによる
高コスト化を避けています。

CLT
鉄骨梁に載せるだけ

ALC外壁に木ルーバーを取り付ける

外装に木のルーバーを取り付けました。日射を遮蔽し、視線を制御する外壁に求められる機能もまた、木材で果たします。ルーバーは下階ほど密度高く、上階に行くほど数を減らすことで、各階で求められる視線の開放度合いを調整します。外壁素材はALC(軽量気泡コンクリート)板。雨水仕舞いのために外壁を貫通させずにALC製造時にあらかじめ埋め込んだファスナーでルーバーを固定するディテールを採用しました。また、自然素材である木ルーバーを高所に用いるため、風雨に対する耐久性・安全性を確実に担保する支持方法を検証しました。

エントランス外装イメージ

木ルーバー–ALC板接合部
(ヘーベルデュアルウォール/旭化成建材株式会社)

本体設計|株式会社久保工
CLT・木ルーバー部設計|株式会社三菱地所設計

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