WORKS

Vol.12

木質建築

CLTの移築構造システム

2020/02/17

CLTを使った移築できる木造。

近年国産材利用の重要性が再認識され、その利用の幅を広げる架構の開発が求められています。本プロジェクトは、このような国内ニーズの中、都心においてCLT木質構造の可能性を国内外にアピールする仮設建築として東京晴海に建設されました。晴海に出現したこの建築は、屋外イベントを行うパビリオン棟と屋内展示棟を含めた全3棟。2021年春に岡山県真庭市へ移築され、その後は恒久建築としての利用が予定されています。今回三菱地所設計で可能性を追求したのが、移動できる木造架構。移築を念頭において接合部に工夫をこらし、CLTの森のような建築を実現しています。

CLT PARK HARUMI

CLTパネルを梁に使う――   パビリオン棟

CLT(Cross Laminated Timber)は、製材を繊維の向きを90度ずつ変えながら積層させた集成材。主にパネル材として壁構造に使われた例がよく見られますが、このパビリオン棟では梁として使用しました。200mmの細い鉄骨柱に無数のCLTパネルが取り付いた森のような様相ですが、全体として大きな門型フレームとして構造が解かれています。210mm厚の平行四辺形パネルは鉄骨と鉄骨をつないだ細かな梁となり、x軸方向、y軸方向へ連なって、全体として軸組(ラーメン構造)を形成するのです。一部の柱に注目すると、パネルはひとつずつズラして設置されているため、天へ向かってとぐろを巻いた状態に。

このプロジェクトはCLTの梁としての可能性を開きましたが、もうひとつ、移動建築としての機能も追求されました。各パネルと鉄骨をボルト結合にすることで、解体組み立てを可能にしました。パネルの小口に薄い台座金物を差し込み、これをドリフトピンで固定。この台座金物と鉄骨角柱を高力ボルトで接合して組み上げます。

ボルト留めCLT
可能にする解体移築

CLT壁構造の移築――   屋内展示棟

屋内展示棟はパビリオン棟とセットで計画しました。展示を巡りながら、ところどころパビリオン棟が目に入ってくるような平面計画を目指したのです。そこで生まれたのが三角形プラン。パビリオンに対面するところで三角形を開いて視線を開放。プロジェクション展示など遮光の必要のあるところでは三角形を閉じます。こうして屋内展示棟は、壁と床にCLTを使いました。

CLT壁構造は多くの先行例があるものの、斜め壁を使った例はあまりありません。CLTパネルだけを組み合わせて、斜めの壁構造として成立させ、しかも解体組立てができる架構をつくる。そのためのディテールもまたCLTに取り付ける金物でした。CLT壁パネル工法の法基準に準じて耐力が規定されている金物製品を探し、最終的にはネジの脱着のみで壁パネルが取り外せる金物の組み合わせとしました。また、床パネルは一部集成材の梁によって支持されています。梁とパネルの接合部では馬の背中に鞍を載せるような金物を設計しました。ボルトを緩めるだけで梁をパネルから取り外すことができます。

屋内展示棟見上げ

CLT壁–CLT床接合部

梁–CLT接合部

プロジェクト体制
事業者|三菱地所株式会社
設計者|株式会社三菱地所設計
デザイン監修者|隈研吾建築都市設計事務所
施工者|三菱地所ホーム株式会社
「CLT PARK HARUMI」公式ウェブサイトはこちらをご覧ください。

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