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特集 歴史的建造物の「継承設計」
06
[ Know-How 06 ]
古図面アーカイブを生かす
当社は、1890(明治23)年に三菱社内に設置された
「丸ノ内建築所(まるのうちけんちくどころ)」に始まる、わが国で最も歴史のある設計組織の一つです。
1894(明治27)年に竣工した三菱一号館から現在に至るまで、
手掛けた図面は途切れることなく残され、
その膨大な情報から各時代の設計思想や建築技術を知ることができます。
2012年から調査・分析を進めている「古図面研究会」の成果は、
実際の歴史的建造物の「継承設計」プロジェクトに生かされ始めています。
※本特集は2016年12月に取りまとめたものです。各担当者の肩書きなどは、その当時のものです。
古図面をじっと眺めて設計者の考えを推理する。
当時の設計思想・技術を踏まえた建築継承を可能に
[ 古図面研究会/神戸市立博物館リニューアル ]*進行中
解体されてしまった明治・大正・昭和初期の建築がどのように建てられていたかを知るには、図面にあたるしかありません。描かれている線や色の表現、寸法、材料名からさまざまな情報を読み取り、設計者たちが考えていたことを想像します。推理小説の主人公になったような気分ですね。図面には印鑑が押してあるので、誰が設計に関わったかもおよそわかります。当社の歴史が見えてくるところも興味深いです。神戸市立博物館(旧横浜正金銀行神戸支店)のリニューアル工事設計プロポーザルでは、原設計者の桜井 小太郎が三菱合資会社時代に描いた図面を現在もすべて保管しており、背景にある設計思想や当時の技術を踏まえた改修ができることが評価され、設計者として選ばれました。

リノベーション
設計部
江島 知義

建築設計一部
住谷 覚




01
月に1回行われている古図面研究会の様子。この時の調査対象は小岩井農場倶楽部。
02
最も古い図面は、1894年、竣工の三菱一号館。
03
三菱五号館1階平面図。右下には当時の技師である上領、横山の捺印が見られる。
04
1935年に竣工した横浜正金銀行神戸支店を保存・活用し1982年に開館した神戸市立博物館。三菱合資会社出身の桜井 小太郎が設計したドリス式の円柱が建ち並ぶ新古典様式の建物は、国の有形文化財に登録されている。進行中のリニューアル計画は、展示空間の一新とともに、街歩きの楽しみや神戸の都市ブランドを向上させる狙いもあり、5社参加の設計プロポーザルで当社が設計者に選ばれた。
神戸市立博物館[旧横浜正金銀行神戸支店]
国登録有形文化財
所在地: | 兵庫県神戸市 |
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竣工年: | 1935(昭和10)年 |
設計者: | 桜井小太郎建築事務所 |
構造/規模: | SRC造/地下1階・地上5階 |
【 リニューアル工事 】
竣工年: | 2019年予定 |
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設計者: | 三菱地所設計 |
継承種別: | 保存 |