超⾼層ビルでも、
ZEB Ready取得
(仮称)内神⽥⼀丁⽬計画
設備設計者が語る。
環境・設備の
アイデアノート
Vol.01
2022.11.10
- #ZEB
- #省エネ
- #超高層ビル
超高層でのZEBって難しい??
ZEB※1は一般的に建物規模が大きくなればなるほど、達成は難しいとされています。建物が大きく、そして高くなればなるほど、空調の熱搬送動力のエネルギー消費量や必要な設備も増えることなどが要因です。しかし延床面積10,000㎡以上の建築物は、国内の年間の新築物件の着工数に占める割合が棟数ベースで1%程度しかないものの、建築物のエネルギー消費量ベースでは36%程度と大きな割合を占めることから、都市全体で消費エネルギーを削減していくためにこの規模の建築物に対してZEB化の推進を図ることが求められています※2。
「(仮称)内神田一丁目計画」(2025年11月末に竣工・開業予定)は、地下3 階、地上26 階、高さ約130m、延床面積約85,200㎡の超高層ビルでありながら、事務所用途の部分評価で、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の最高ランクの5★と、「ZEB Ready※3」の認証を2022年9月22日付で取得しました。
Data
物件名 | (仮称)内神田一丁目計画 |
---|---|
所在地 | 東京都千代田区内神田1丁目31番11外(地番) |
敷地面積 | 約5,100㎡ |
延床面積 | 約85,200㎡ |
規模 | 地下3階/地上26階/塔屋2階 |
高さ | 約130m |
建蔽率 | 約65% |
容積率 | 約1400% |
竣工 | 2025年11月末(予定) |
主要用途 | 事務所、店舗、ビジネス・産業支援施設、駐車場等 |
設計・監理 | 三菱地所設計 |
施工 | 大成建設 |
超高層でも実現できる、
ZEB化への取り組み
この建物では、日射負荷を軽減すべくメインファサードを北面開口とする採光計画とし、Low-E 複層ガラスや高断熱材の使用をはじめ建物の外皮性能をより強化したパッシブ建築設計に取り組むことで、建物全体のエネルギー負荷低減を実現しています。加えて、アクティブ技術として、地域冷暖房による高効率熱源の活用や全熱交換器等の高効率機器の採用、昼光利用制御等のエネルギーの高効率化を図るなど先進的な環境技術を導入しています。これら建築と設備の取り組みを最適に組み合わせることにより、超高層ビルでありながら、事務所用途部分の建物内消費エネルギーを省エネ計算上で51%削減した環境性能の非常に高いZEB Readyの超高層ビルを実現しました。
省エネ=建築設計×設備最適化の合わせ技
ZEBや省エネと聞くと、設備設計者が頑張るものと思われがちですが、実際のところZEB実現には設備の取り組みだけではなく、まずは負荷を抑制したパッシブ建築を設計するという点で、建築計画での取り組みが不可欠です。また、特殊な先進技術をたくさん導入したからZEBになるということでも必ずしもなく、まずは設計における条件・想定で無駄がないかを改めてよく見直して、設備容量の最適化を図った上で高効率化していくということがZEB実現のための重要なポイントだと考えます。もちろん建物ごとに与件・特性があり、毎回同じ設計手法を行ったからといってZEBが実現できる、というものでもないと思うのですが、これら基本の取り組み・見直しを丁寧に積み上げることで、超高層ビルでもZEB水準の建物を実現することは不可能ではないということをこの建物で証明しました。
- ZEBとは、年間で消費する建築物のエネルギーを大幅に削減するとともに、創エネでエネルギー収支「ゼロ」を目指した建築物のこと
- ZEBロードマップフォローアップ委員会 『ZEBの更なる普及促進に向けた今後の検討の方向性等について』 令和3年4月26日
- ZEB Readyとは、ZEBのうち再生可能エネルギーを除き、基準1次エネルギー消費量から50%以上の1次エネルギー消費量削減に適合した建築物のこと
Designer's Voice
[ 設計者 ]
電気設備設計部(2006年入社)
中野 雄也Yuya Nakano
ZEB実現のため高効率なオフィス照明を採用し、適正な明るさに調光制御することで大幅な照明エネルギーの削減に努めました。事業者・照明メーカーと協議を重ね、スマートスペック照明の製品化を実現しました。今後のオフィス照明のスタンダードになれば幸いです。
※所属はプロジェクト担当時点
[ 設計者 ]
機械設備設計部(2012年入社)
諫早 俊樹Toshiki Isahaya
ZEB実現において重要な設備容量の最適化のためのスペックの見直しなどは事業主の方々に理解いただくことが不可欠でしたが、事業主の方々と一緒に事例を調査し、見直しに取り組めたことが非常に良かったです。
※所属はプロジェクト担当時点